【ご相談内容】免責不許可事由、弁済額、清算価値

個人で中古自動車の買取業を行っている者です。

基本は新潟県全域ですが、たまに、高崎等、群馬もあります。

基本的には、安く買って、整備して、オークションでさばくのですが、時には、修理費用の方が高くついてしまうなどの場合もあったりします。

目利き違いで、思ったほど、高く売れなかったりもあります。

あとは、これが一番よくないのですが、知り合いだからと無理に高めで買取をしてみたりで、どんどん赤字が累積してしまいました。

日本政策金融公庫、銀行、信用金庫、消費者金融のカードローン等、支払が追い付かなくなりました。

さらに問題は、買い取った車を修理に回すこともできなくなり、買ってすぐ、転売して換金するということを立て続けに行い、お客さんに買い取り代金も支払えないというのが5件ほど出てしまいました。

自己破産して楽になろうと考えたのですが、怒ったお客さんからは、

「あんた。自己破産なんかさせないよ。」

「換金するようなやつは自己破産しても借金は免れないぞ!」

と言われています。

さらに、調べると個人再生又は民事再生という手続もあるようですが、どちらかはいけませんか?

自己破産とは全く違う手続きなのでしょうか。

【ご回答】~弁護士(新潟市・新潟県)から~

個人再生と自己破産の違い

免除される債務が全部か一部か

個人再生と自己破産の最も大きな違いは、

・自己破産をして免責されれば、債務(負債)はその全額の支払い義務が免除される

・個人再生の場合には、債務(負債)は大幅にカットされますが(最大9割まで)、全額免除されない

ということです。

家・車等の財産が処分されるか

また、自己破産の場合には、その申し立てをした際に、財産があるときは、それらは原則として、裁判所の管理下に入って、破産管財人が報酬として持っていくか、債権者への配当に充てられます。

他方で、個人再生の場合には、その申し立てをした際に、財産があるときは、それらが裁判所の管理下に入ることはないですが、その財産に見合うだけの額の返済を必要とされます。

免責不許可事由があるか

自己破産をすれば、債務(負債)の支払い義務がすべて免除される、とは言うものの、当然、その分、認められるための条件も厳しいものがあります。

その一つが、免責不許可事由というものです。

どのような場合に免責が不許可になるのかというと、つぎのような場合です。

財産隠匿

破産の申し立てをする前に、財産の名義を変更するような場合も隠匿とみなされる場合があります。

換金行為

純粋な買い物ではなくて、買ったものを現金化する行為です。

浪費やギャンブル

車を購入する行為等も程度によっては浪費になりえます。

投機行為

FX・信用株式投資・先物等のレバレッジがきいたものが投機行為と判断される傾向にあります。

破産手続における虚偽の説明

債権者を故意に告げない等も免責不許可事由になり得ます。

裁量免責

以上がよく、問題とされる免責不許可事由です。

ただし、これらの事由があるから、絶対に、自己破産の免責が許可されないというわけではありません。

例えば、たった一回、パチンコで1万円すってしまったからって、自己破産の免責が一切認められなくなるのは過酷ですからね。

そういう個々の事情を考慮して、裁量免責というものもあり得ます。

ですが、逆に言えば、このような裁量免責が認められるかどうかも危うい、というときには、個人再生を検討することになります。

個人再生の返済額(債務はどれくらいカットされるのか)

「債務がゼロになるのと、債務がいくらか残るのと、どちらがいいですか?」

と尋ねられたら、債務の額だけを考慮すれば、普通に考えれば、

「債務をゼロにしてもらえる方が助かる」

ということになるでしょう。

ですが、諸般の事情で、個人再生を選ぶことも検討せざるを得ない場合もあります。

その場合に、最も気になるのは、一体どれくらい、債務が残るのだろうか?

逆に言えば、どの程度まで債務は免除してもらえるのだろうか?

ということになるかと存じます。

債務の額によって免除率が異なる

基本的には、その個人再生を申し立てた人の債務の額によって、返済額(債務免除額)は決まってきます。

債務の総額が、

100万円以上500万円未満の場合には、100万円を返済

500万円以上1500万円未満の場合には、5分の1を返済

1500万円以上3000万円未満の場合には、300万円を返済

3000万円以上5000万円未満の場合には、10分の1を返済

することになります。

固定の返済額と割合による返済額が混在しておりますので分かりにくいかもしれません。

ただ、個人の民事再生の場合、会社の民事再生とは異なり、500万円以上1500万円未満の場合が多いです。

ですので、5分の1の返済、すなわち、債務の8割カット(免除)と言われていることが多いです。

ですが、個人の方でも負債総額が大きい場合も場合によってはあります。

3000万円以上5000万円未満の場合には、10分の1を返済すればよいので、結局、9割カット(免除)ということになります。

なお、住宅ローンを除く負債が5000万円以上の場合には、個人再生は手続きとして使うことができません。

清算価値

以上が債務・負債額から計算される返済額なのですが、もし、個人再生を申し立てる際に、例えば、現金・預金のみならず、車、生命保険、不動産等、何か財産を有している場合には、返済額の計算方法が少し複雑になります。

債務・負債額から返済額だけを計算すればよい、というものではありません。

個人再生の場合には、その申し立てをした際に、財産があるときは、それらが裁判所の管理下に入ることはないですが、その財産に見合うだけの額の返済が必要とされるのです。

具体的に説明しますと、例えば、債務・負債が3000万円であるとします。

債務・負債額か返済額を計算すれば、10分の1を返済すればよいので、返済額は300万円になるはずです。

ですが、もし仮に、所有している車に400万円の価値があるとすればどうでしょう。

これが、自己破産手続きであれば、破産管財人によって、その車は売り飛ばされてお金に換えられて、破産管財人の報酬と債権者への配当になります。

破産した人の手元にはお金は残りません。

他方で、個人再生の場合には、その車を売り飛ばされることはないのですが、少なくとも、その持っている車の値段分以上は返済してください、ということになっています。

ですので、返済額は300万円ではなく、その車の値段に相当する400万円になるのです。

~いかがでしたでしょうか。以上、弁護士(新潟市・新潟県)から、個人再生と自己破産について、それぞれの特徴、要件について、自己破産における免責不許可事由、個人再生における弁済額、清算価値も含めて、ご説明致しました。~