【ご相談内容】生命保険と相続放棄について

主人が亡くなりました。

主人は私を受取人とした死亡保険金3000万円の生命保険に入っていました。

しかし、予想していましたが、今、発見しただけでも、1000万近い借金がありました。

ほとんどがゴルフ関連だと思います。

自分がプレーするのもさりながら、プロツアーにくっついて毎週のように各地に遠征していましたから、そんなお金が続くはずはないのです。

しかも、ゴルフクラブも次から次へと買っていましたので、家の中はクラブだらけです。

さすがに、それでも3000万円の借金にはならないと思いますが、友人から、

「相続放棄して、保険金だけもらえば?」

と言われました。

そんなことは可能なのでしょうか?

【ご回答】~弁護士〔新潟市(新潟県)〕からのご説明~

保険金の受領は相続とは関係なし

生命保険の受取人があなたになっているのであれば、その受取は、遺産を受け取っているのではなく、生命保険契約に基づいて、ご主人の死亡を条件として、あなたに支払われるだけですので、相続は関係がありません。

したがって、相続放棄をしたとしても、そのこととは関係ありません。

今回の件で言えば、生命保険金3000万円を受領し、相続放棄して1000万円の借金の支払義務を逃れることができます。

相続と相続税の話を混同しないで

ではなぜ、これほど、生命保険金が相続と関係があるのではないかと考える方が多いのかと言いますと、生命保険金も相続税の計算をするときに、その受領額を組み入れて考えるからです。

つまり、生命保険金は、相続(遺産分割や相続放棄)には関係がないけれども、相続税の計算上は、関係があるのです。

このことから、生命保険金をもらうとどうなってしまうのだろう、といろいろ考える方が出てくるのです。

ちなみに、生命保険金がある場合の相続税の計算の例は次のようになります。

あなただけが唯一の相続人である場合を例に

父(被相続人)が死亡し、母と子2人が法定相続人になる場合

被相続人の財産     0円(借金しかない)
生命保険金総額    3000円
▲生命保険の非課税枠 500万円×1人=500万円
▲基礎控除額     3,000万円+600万円×1人=3600万円

以上のような状況であるとして、あなたの場合の非課税枠(相続税がかからない上限)は4100万円(3600万円+500万円)です。

他方で、あなたが受領する保険金額は3000万円です。

生命保険金の受領における相続税の計算

相続税を支払う必要があるかどうかは、【遺産(マイナスですが)+受領した生命保険金】の合計から、非課税枠を引いた金額がいくらになるかで決まります。

そうしますと、遺産(0円)と生命保険金(3000万円)の合計金額から非課税枠(4100万円)を控除すると、「-1100万円」となります。

つまり、相続税を支払う必要はないのです。

ですので、上記の例ですと、あなたの生命保険金の受領は、相続も関係ありませんし、相続税も関係ない、つまり、相続税はかからないということです。

ですので、申告等の手続もあなたには無関係ということになります。

ただし、あくまで、例ですので、税金の関係につきましては、念のために税理士に確認することをお勧めいたします。

相続放棄する前に財産調査を慎重に

ただ、他の財産との兼ね合いですから、よく考えた方がよいですよ。

家の中がゴルフクラブだらけとのことですが、他にもなにか財産があるか分かりません。

要するに、借金>財産ということで、プラスマイナスがマイナスになる場合には相続放棄をすればよいですが、逆もあり得るのです。

過払い金とは

借金についても、昔から借りたり返したりしていたのであれば、

「過払い金」

と言って、よく計算してみると、借金がいつの間にか逆に消費者金融会社に対する請求に変わる場合もあります。

「過払い金」とは、それまで、キャッシングやサラ金などを借りて返済してきた場合に、貸金業者に支払い過ぎていた利息のことをいいます。

消費者金融やカード会社は、民事上は無効とされている利息制限法の上限を超えた利息を受領していた時期があります。

そこで、長年、借金の返済をしていたという方の場合には、過払い金が発生している可能性が高いのです。

過払い金にはならなくても借金が計算で減ることも

そうでなくても、「引き直し計算」と言って、正しい利息計算をすることによって大幅に借金の額が減ることだってあるのです。

・・・と何だか、どこかの弁護士事務所のCMみたいになってしまいました。

とにかく、生命保険金は受け取れるのですから、落ち着いて、ゆっくりと財産調査をすることをお勧めします。