【ご相談内容】個人再生手続廃止および職権での破産手続き開始

現在、個人再生の申し立ての準備中で、司法書士事務所に依頼して、費用を積み立てながら、毎月、家計簿を作って送っています。

ところが、その家計簿を見た司法書士事務所の事務員の人が、

「今は債権者への返済がストップしているのに毎月の収支がぎりぎりじゃないですか。」

「このままですと、個人再生が始まった場合に月々の支払いが無理っぽくないですか?」

「自己破産したらどうですか?」

と私を心配して言ってくれました。

ただ、私が、

「そうすると、住宅はどうなりますか?」

「自己破産しても住宅は、ローンを支払いながら住んでいられますか?」

「子供の学校の関係でどうしても引越しはできないんです。」

「学区外に行っても駄目だし、家を手放して近所のアパートに移り住んだら子供がいじめられないか心配です。」

と言ったところ、急に不機嫌になり、

「そんな、わがままばっかり言っていても、支払えなけりゃ、個人再生なんて無理でしょ!」

「あなたが作った借金なんだから、私を責めるのはお門違いじゃないですか!?」

とキレられてしまいました。

責めるつもりなどなかったのですが。

それで、私は、

「例えば、自己破産で申し立てはするけど、経済的に何とかなりそうだったら個人再生に切り替えられますか?」

「逆に、個人再生で申し立てて、厳しそうだったら自己破産に変更できますか?」

と聞いたところ、

「そんな複雑なこと、やったことありません!」

とまたキレられてしまいました。

どうすればいいのでしょうか?

ついでに聞きますと、自動的・強制的に、個人再生から自己破産、自己破産から個人破産に変更されるということもありますか?

【ご回答】~弁護士(新潟市・新潟県)から~

個人再生申し立て後の手続きの流れ

個人再生というのは、申し立て書類を提出してそれでお終い、というものではありません。

申し立て後、きちんとした再生計画案を提出して、それを債権者の決議にかけます(小規模個人再生の場合)。

その上で、裁判所の認可を得て、初めて、というか、むしろ、そこから、再生計画に従った支払いが始まります。

そして、3年ないし5年かけて支払いを完了すれば、再生が終了して債務圧縮(債務免除)が確定した、と言えます。

ところが、すんなりと、いかないこともあります。

申し立てをしたものの、最低弁済額が予想外に高くなりそう、

とか、

債権者の決議において、議決権者総数の頭数の半数以上、または、議決権総額の2分の1を超えることにより決議が通らなかった、

とか、

そのような場合には、手続きは中止(廃止)(その時点で終了)になります。

裁判所による職権での破産手続き開始

そして、個人再生が「廃止」になった場合、裁判所は、破産手続開始原因(債務超過等)が認められれば、職権で破産手続開始の決定をすることができます。

ですので、理論上は、個人再生をする方は、債務超過でしょうから、個人再生手続きが潰れてしまえば、裁判所は破産に移行させることができます。

ただし、できるだけです。

無理やり強行しても、本人が嫌がっているのに、そんな手続きがすんなり進むはずがありません。

それに、

「勝手に破産に持っていかれたらどうしよう」

と、本来、個人再生できる人も委縮して、個人再生の利用の手続をためらってしまうかもしれません。

ですので、裁判所も強権を発動して、破産にもっていくということはしておりません。

個人再生の取り下げ

では、自発的、自主的に個人再生から自己破産手続きに変更することができるでしょうか。

自分で自由に切り替えることができれば、たしかに便利で都合がよいです。

もしくは、申し立ててみたものの途中で嫌になったら何時でも取り下げすることができるでしょうか。

自己破産も、個人再生も、その手続きを開始する旨の決定、「手続き開始決定」が出た後は、取り下げられません。

ですが、個人再生を申し立てたものの、どうにも返済計画に従った返済をしていくことが難しい、ということに立ち至れば、結局、再生計画案を提出することができません。

(実際の収入や支出とかけ離れた再生計画を提出するわけにもいきません。)

例えば、個人再生を申し立てたときは、普通に会社勤めしていたのに、急に、

体調を崩した、

事故に遭った、

リストラされた、

などということがないわけではありません。

そのような場合には、再生計画案を提出できず(提出せず)、結局、手続廃止に至ります。

手続き廃止・取り下げ後はどうなるか

そして、個人再生申し立て以前の状態に逆戻りです。

ちなみに、個人再生も自己破産も開始決定前であれば取り下げ出来ます。

取り下げても、個人再生申し立て以前の状態に逆戻りです。

つまり、借金だらけで支払いもままならず、債権者からは、払え、払えの督促をまた受けることになります。

ですので、債務(負債・借金)の整理をする必要があります。

そこで、再度、今度は自己破産の申し立てを行えば、実質的には、個人再生から自己破産に切り替えたのと同じことになります。

自己破産から個人再生へ変更できるか?

まず、破産手続き開始決定前であれば、申し立てを取り下げることができますので、取り下げれば、破産申し立て以前の状態に逆戻りです。

ですので、そこから、個人再生の申し立てを行います。

問題は、開始決定が出た後です。

破産も開始決定が出た後は取り下げることが出来ない上に、個人再生と異なり、再生計画案を提出しなければ、そこで手続きが止まるというものでもないのです。

つまり、自分から破産手続きの進行を止める術が開始決定後はないのです。

具体的に言いますと、例えば、持ち家がある自己破産の申し立てのケースにおいては、破産管財人は、家を売却しようとしてきます。

家を出ていこうとしないとか、いろいろ抵抗を示して、手続きが遅らせることはできるかもしれません。

ですが、いずれにせよ、

「家を出て行ってくれないのであれば、もう売却はできないが、債権者にその旨を報告して競売にしてもらう。」

と言われてしまえばお終いです。

競売手続きが進んでしまいます。

ですので、自己破産をしてから個人再生に切り替えるということは、開始決定以後はまず難しいです。

また、裁判所が破産から個人再生に切り替えるということもありません。

~いかがでしたでしょうか。以上、弁護士(新潟市・新潟県)から、個人再生手続の廃止、職権での破産手続き開始、個人再生及び自己破産の取り下げ等について、ご説明いたしました~

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