【ご相談内容】損害賠償(不当利得返還)請求 と自己破産

新潟県糸魚川市在住ですが、職場としては、上越市内のガソリンスタンドで働いております。

とある上越市内の居酒屋で知り合った人(仮に、「Tさん」といいます。)からウズベキスタンという国の鉱物資源の投資の話を聞きました。

その鉱物資源開発資金を拠出すれば、最低でも1か月5%以上の配当がもらえるという事でした。

例えば、

100万投資すると、

毎月5万円の入ってきて、

12カ月(1年)で60万円、

24カ月(2年)で120万円

となり、元本と併せると、220万円になります。

同様に、1000万円投資するなら2年で2200万円になります。

そこで、私は、貯金とキャッシング・カードローンをあわせて、400万円投資しました。

2年で元本と併せて880万になるはずでした。

最初のうちは、順調に毎月20万円ずつ支払いが振り込まれていました。

しかし、半年ほど経つと、支払いが滞るようになりました。

そして、支払金額が、13万円とか中途半端な金額が振り込まれたりするようになりました。

あまりに様子がおかしかったので、そのTさんに確認すると、

「ウズベキスタンで大幅な税法の改正があり、日本への送金に対して、ストップがかかったり、一部政府保管になったりしている。」

とか言われました。

「何か、そのことが確認できる資料とかないのか?」

とか聞いても、

「そもそも、この投資案件は、国の法律でも、輸出規制法に違反するおそれがあるので、おとなしく黙っているしかない。」

「君も警察につかまりたくないだろう。」

とか言われて、お金のこともそうなんですが、輸出規制法違反で逮捕されるのも困ります。

ですが、 Tさんには、今まで、黙ってきましたが、

「そもそも400万円の投資のうち、300万円はキャッシングとカードローンで借りたものですから、段々、返済に窮しています。」

「何とかしてもらわないと困ります。」

と泣きつきました。

ですが、Tさんは、

「私のせいではない。」

「文句があるなら ウズベキスタンの偉い人に言ってくれ。」

「私自身も投資が返ってこなくて困っているけど我慢しているんだ。」

と言われるだけです。

投資の問題と輸出規制法違反の逮捕の問題と、自分の借金の問題とで自分もどうしてもいいか分からなくなってしまいました。

このまま行くと、私は破産とか個人再生とかになるのでしょうか?

逮捕されませんか?

【ご回答】~弁護士(新潟市・新潟県)から~

投資詐欺(出資法違反)

残念ですが、これは、詐欺ですね。

ここまで確かな情報が何もない中でよく、そんな400万円も突っ込んだものですが、そいつの話にはどこにもまともな点がありません。

ウズベキスタンのどこに、そんな日本の一個人の出資を受け入れる機関があるというのですか?

それとも日本の企業に投資しているのですか?

大体、鉱物資源の開発といっても、内容が抽象的過ぎます。

どこに、月5%、年60%ものリターンを得られる事業があるというのですか?

理解に苦しみます。

インターネットか、新聞か、テレビか、誰かに聞いたか、で、

ウズベキスタンで鉱物資源開発を進めて国の発展を図っているとか、

日本企業がかかわっているとか、

そのような程度のことを適当に着色したのでしょう。

輸出規制法違反に至っては訳が分かりません。

何の輸出規制にひっかかるというのでしょうか?

逮捕されるのは、そのTさんの方です。

おそらく、そのTさんが金を使い込んでしまっているでしょう。

金の回収はかなり難しいと思われます。

損害賠償請求権(不当利得返還請求権)と自己破産・個人再生

自己破産・個人再生をするにあたって問題となるのが、不法行為に基づく損害賠償請求権(不当利得返還請求権)が、形式上はあなたの財産として属していることです。

分かりやすく言いますと、あなたは、Tさんから騙され、詐欺ないし横領という不法行為をされたということで、Tさんに対して損害賠償を求める権利があります。

あるいは、Tさんがあなたのお金を正当な理由なく持って行ってしまっているので、Tさんは不当に利得を得ており、あなたはその返還を求める権利があります。

これも一応、一つの財産(権利)です。

ただ、実際問題上、回収が困難であるという事が問題です。

回収困難な債権と自己破産

自己破産の場合には、その申立書類の1つに財産目録がありますが、

不法行為に基づく損害賠償請求権(不当利得返還請求権)を財産目録に記載する必要があります。

ただ、債権額と回収見込額が今回は一致しません。

今回のようなケースですと、【回収見込み 無し】と記載します。

そして、その回収の見込みが無いと判断した理由をさらに記載します。
 
もちろん、破産管財人としては、必ず、一度は、回収に向かって動きはするでしょうから、そのTさんの住所、連絡先(電話番号・メールアドレス)等も記載してください。

その他、そのTさんとのやりとりのメールとか、Tさんからもらった文書とか回収に役立ちそうなものは全部出してください。

回収困難な債権と個人再生

個人再生の場合には、本件では再生委員がつく可能性が高いです。

なぜかというと、不法行為に基づく損害賠償請求権(不当利得返還請求権)の調査が必要だからです。

なぜ、調査が必要かと言いますと、その不法行為に基づく損害賠償請求権(不当利得返還請求権)を清算価値に計上するかどうかの判断をしなければならないからです。

清算価値というのは、自己破産で言う所の【財産目録記載の財産】と考えていただいて結構です。

個人再生の場合には、最低返済額を計算するのに、この清算価値が重要な意味を持ってきます。

具体的には、個人再生の場合には、清算価値以上の返済をしなければならないと決められているのです。

例えば、債権(財産)が300万円あった場合には、300万円以上は返済しなければならないとされるのです。

そうしたら、どうなるか?

あなたのケースですと、結局、もともとの借金が300万円ですから、結局、300万円は、まるまる返済しなければならず、何も時間と費用をかけて個人再生する必要はなかった、という事になりかねません。

もちろん、そうならないように、個人再生の手続の中で、

「この不法行為に基づく損害賠償請求権(不当利得返還請求権)は、○○円あるけれども、手元に帰ってくる可能性はない価値ゼロの債権である」

と清算価値から外してもらえるようにしなければなりません。

本件の対応(破産管財人への引継ぎ)

自己破産だ個人再生だという前に、一度、回収に向けてどこまで出来るか、弁護士に相談してみた方がいいでしょう。

その回収の件と、自己破産ないし個人再生の手続きも併せて依頼した方がいいと思います。

ただ、本件の場合には、他に個人再生にしなければならない理由がなければ、自己破産で借金の整理はした方がいいと思います。

そして、自己破産の前に回収に向けて行った結果を破産管財人に引き継ぐのがよいでしょう。

~いかがでしたでしょうか。以上、弁護士(新潟市・新潟県)から、投資詐欺(出資法違反)に引っかかり、借金を抱えてしまったケースにおいて、不法行為に基づく損害賠償請求権(不当利得返還請求権)と自己破産・個人再生につき、ご説明致しました。~

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