【ご相談内容】整理解雇と未払い残業代や労働保険

前回に引き続いての質問です。

村上市(新潟県)で、従業員正社員2名、パート・アルバイト2名の合計4人で、繊維(アパレル)関係の販売業をしております。

前回の質問で、これから民事再生(個人再生)をするために、正社員2名に辞めてもらう、というお話をしたのですが、実際に話してみたところ、えらい剣幕で、文句を言い出しました。

予想外でした。

ついに、未払い残業代、労働保険等の話にまで話が及ぶことになりました。

「10年分遡って請求してやる!」

と息まいています。

未払い残業代や社会保険は、個人再生の対象にはならないですか?

なんだか、話が労働問題っぽくなってきており、そもそも、解雇できるのかも不安になっています。

【ご回答】~弁護士(新潟市・新潟県)から~

民事再生に伴うリストラのための解雇(整理解雇の4条件)

経営の合理化における支出カットの最たるもが、従業員のリストラですが、

たしかに、

「民事再生(個人再生)をするから、はい、さようなら」

と簡単に解雇が認められるわけでは確かにありません。

整理解雇を理由に解雇するには、いわゆる整理解雇の4条件というものを満たす必要があります。

・人員削減の経営上の必要性の存否

・整理解雇回避努力義務の実行の有無

・合理的な整理解雇基準の設定とその公正な適用の存否

・労使間での協議義務の実行の存否

ただし、以上の条件というのはいわゆる企業、それも比較的大規模な企業における裁判において、示された基準ですので、あなたのような小規模な個人事業主がそれらの条件をそのまま適用できる環境を整えるのは不可能です。

ただし、少なくとも、

「人員削減の経営上の必要性の存否」

「整理解雇回避努力義務の実行の有無」

は必要となります。

具体的に言うと、

経営上今の人員の人件費を捻出することができないこと

及び

解雇を回避するための努力、例えば、給与減額、時短(これも給与減額ですが)その他の措置によって、なんとか解雇を回避できないかを検討・実施(提案)すること

は必要です。

ただし、そもそも、給与減額や時短については、従業員の方が、

「そんな給与では暮らしていけない。今まで通り雇用し続ける形でないと納得しない!」

と言う場合には、それ以上は、どうしようもありません。

未払い残業代と消滅時効

『未払い残業代を過去10年間に遡って請求する』

と言われているようですが、未払い残業代の消滅時効は2年です。

これは、労働基準法に定められているもので、任意に変えられるものではありません。

なお、裁判例の中には、未払い残業代ではなく、損害賠償請求という形に法律上の構成を変えて、消滅時効が3年とされた例もないではないですが、通常は認められておりません。

労働保険の遡及

労働保険に入るべきであったのにそれまで加入していなかったということであるとすると、たしかに、遡及して加入するという結論になります。

ただし、現実には、事業所からの申請を受けて加入となりますので、何も労働災害が生じていないのに、ただ遡及して労働保険料を徴収するということはあまり行われておりません。

ただし、労働災害が生じて、労災保険給付を行った場合は、問題は異なります。

いざ、労災保険給付が認められてしまうと、

・労働保険の加入を指導されたのに加入してなかった場合は100%

・それ以外の場合で労働保険に加入してなかった場合には40%

を徴収されます。

一般優先債権(個人再生と労働債権)

やっと個人再生の話に戻りますが、給与等の雇用にかかる労働債権は、

「一般優先債権」

とよばれ、

「一般優先債権は,再生手続によらないで,随時弁済する。」

とされており、たとえ個人再生を行ったとしても、減免の対象になりません。

従って、個人再生における他の減免の対象となった再生債権とは別に、その労働債権、 その給料等を支払う必要が出てきます。

そのため、一般優先債権を再生債権と別に返済しなければならないため、その金額によっては(その金額が大きければ)、そもそも、全体として支払いは無理!という事になりかねません。

~いかがでしたでしょうか。以上、弁護士(新潟市・新潟県)から、個人再生前後に発生した未払い残業代や社会保険料について、民事再生に伴うリストラのための解雇(整理解雇の4条件)、未払い残業代と消滅時効、労働保険の遡及及び一般優先債権(個人再生と労働債権)を含め、ご説明致しました。~

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