【ご相談内容】個人再生の投資の扱い及び返済額の計算(債務圧縮率)

新潟市内で、建築コンサルタントをしておりますが、数年前、知り合いの建築会社の社長に頼まれ、大きな不動産プロジェクトに力を貸してほしいと言われ、当時の手持ちの金を投資してしまいました。

加えて、私の知り合いで不動産関連の仕事をしている社長さんたちも投資を紹介してしまいました。

ところが、そのプロジェクトは、もともとが、採算の合わない滅茶苦茶なもので、単なる原野だけが残ってしまいました。

しかも、その社長は、一旦、東京にいるという噂もありましたが、現在、どこにいるのかは分かりません。

そして、その後は、自分自身のための仕事の運転資金のために、銀行から借り入れをしました。

しかしながら、私がその不動産プロジェクトに資金を出すことを紹介した社長さんからは、一切、仕事をもらえなくなりました。

当然と言えば当然ですが。

新規開拓も苦戦中です。

私にも家族がいるもので、なんとか大きいのが一つ受注できれば取り戻せると思い、ついついカードを切って買い物をして、キャッシング&リボ払いで、家族には厳しい状況を見せないようにここまで来ました。

ですが、先が見えなくなってしまいました。

住宅ローンはありませんが、今の仕事を一切中断することはできないので、なんとか個人再生でいけないかと思っております。

1 個人再生において、このデタラメ投資の後始末はどうなりますでしょうか?

2 個人再生の返済スケジュール(どのくらいの金額をどのくらいの期間で支払うのか?)はどうなりますか?
 
【ご回答】~弁護士(新潟市・新潟県)から~

この投資対象は貸金か、出資か、不動産か?

実は、投資と言いましても、いろいろな形があります。

(1)貸金(金銭消費貸借)の場合

単にお金を貸したりする場合には、多くの場合において「金銭消費貸借契約書」を締結します。

その場合には、例えば、1000万円を貸したとなっている場合には、額面上(実態に照らせば返ってくる見込みがなくても)、

1000万円の貸金債権

という財産権があるので、負債が1000万円より少ない場合には、そもそも、破産するおそれがなく、個人再生の要件が満たされません。

個人再生では、「破産しそうだ」という破産するおそれがあることが必要とされているのです。

ですので、個人再生を申し立てる前に、回収についての一通りの努力・手続きを行った上で、

『額面上は1000万円の債権を持っているのが回収不能である』

『したがって評価額はゼロ(0円)である』

ことを確定してから出ないと、個人再生の申し立てをしても、個人再生手続きの開始決定がでないと思われます。

(2)株式投資の場合

その不動産投資プロジェクトが会社を設立して行われたという事であれば、出資というのは、その会社の株を買った、という見方もできます。

つまり、株式の引き受けです。

そうしますと、株も1つの財産です。

例えば、トヨタ自動車の株とか、三菱UFJ銀行の株とか、そういう株を持っているのと同じ扱いになります。

その場合には、株式という有価証券を持っているので、その株式の価値が個人再生手続き上、あなたが有している財産(清算価値)ということになります。

株式の評価を、厳密にやろうとすれば、とても専門的な会計上の知識が必要となりますが、会社自体が債務超過であれば、株式の価値はゼロになるでしょう。

(3)不動産投資の場合

また、今回のように不動産関連の出資という事ですと、その不動産への投資、すなわち不動産(ないしは不動所有権の持ち分)の購入ということもあり得ます。

その場合には、その購入した不動産の価額があなたが有している財産(清算価値)ということになります。

個人再生の手続きにおいては、その不動産の評価は、いくつかの不動産会社の見積書をとって、中間値ぐらいで判断されます。

路線価や固定資産評価額を参考にすることもありますが、不動産市場での価格が一番重要になります。

ただ、お話を伺う限りですと、原野ということですので、価値はどの不動産屋も評価不能(あるいは、評価ゼロ(0円))と出てくるのではないでしょうか?

個人再生の返済スケジュール

(1)個人再生をした場合の支払い金額(返済額)はいくらになるか?

負債総額から計算した最低弁済額

個人再生においては、個人再生手続きの申立人の負債総額(債権総額)がいくらかによって、最低限弁済しなければならない金額が決まるのが原則です。

返済額の基準となる債権(負債)は「基準債権」とも言われます。

なお、本件では関係ありませんが、個人再生手続きとは住宅資金特別条項を用いる場合には、他の負債とは別に住宅ローンを支払って行くので、住宅ローン債権はカウントされません。

返済額(最低弁済額)の計算方法(債務免除率)

債権総額が  100万円未満・・・全額返済(免除なし)

債権総額が  100万以上 500万円未満 ・・・100万円

債権総額が  500万以上1500万円未満・・・5分の1

債権総額が 1500万以上3000万円未満・・・300万円

債権総額が 3000万以上5000万円未満・・・10分の1

以上の通りで、例えば、債権(債務)総額が4000万円であれば10分の1の400万円まで減額(圧縮)されます。

清算価値保障

以上のように、債権総額から返済額(最低弁済額)を計算するのが原則ですが、個人再生などの再生手続きでは、その申立人が持っている財産の価額以上を返済しなければならないという決まりがあります(清算価値保障)。

したがって、例えば、債権(債務)総額が4000万円であれば10分の1の400万円となっても、500万円の保険の解約金があるという場合には、500万円が返済額(最低弁済額)となります。

(2)個人再生をした場合の返済期間はどのくらいの長さになるのか?

個人再生手続きでは、原則として3年間で、最低弁済額を返済しなけれならないとされていますが、3年の期間が厳しいという特別の事情があれば、5年までは認められます。

また、例えば、3年間ずっと支払いしないで、3年経過時に一度にまとめて支払うというような計画は認められません。

3か月に1回以上の分割払いとする必要があります。

毎月支払う方が多いようですし、そのようにお勧めしております。

(やはり、人間の心理として、ためて支払うというのは相当な自己管理能力が必要となってきます。)

それに、支払手数料の問題もありますが、やはり、3か月分もためてしまうと、それができなかったときにリカバリーが難しくなりダメージが大きくなります。

ですので、例えば、3年で36回払い400万円を支払うとすると、毎月の支払金額は、約11万円になります。

また、5年で60回払い400万円を支払うとすると、毎月の支払金額は、約6万7000円になります。

至極、当たり前ですが、3年の方が月々の支払金額は大きくなります。

ですが、辛いことは早いこと終わらせたいということであれば、頑張って3年にするというのも考え方です。

~いかがでしたでしょうか。以上、弁護士(新潟市・新潟県)から、個人再生と投資の関係、及び個人再生の返済スケジュール(どのくらいの金額をどのくらいの期間で支払うのか?)についてご説明致しました。~

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