【ご相談内容】生命保険解約の必要性と清算価値基準
この度、離婚して、新潟の実家に戻ってまいりました。
ずっと県外で保険の外交員をしておりましたが、子供はいません。
ただ、これは離婚の原因でもあるのですが、夫はそれなりに有名な企業のサラリーマンだったのですが、ギャンブル依存症だったのです。
おかげでいつも家の中は火の車で、400万円の借金を作ってしまいました。
離婚の際に、
「私名義の借金は何とかしてほしい」
と話はしましたが、それどころか、まだ借金が増えそうな感じだったので、とりあへず籍だけ抜いてもらい、逃げるように帰ってきたというのが実情です。
仕事は保険の外交員なので、新潟でもすぐに仕事は見つかり、今の仕事には満足してます。
ところが、住民票を移したからか、実家にも督促状が頻繁に来るようになり、そろそろ、借金の整理をしなければならないと感じています。
本当に悔しいです。
ですが、いつまで待っても、別れた元夫が私の借金の整理をしてくれるとは思えません。
なお、私は保険の外交員なので、どうしても自己破産することはできません。
加えて、仕事の関係上、何本も生命保険に入っているのですが、お金が苦しかったので、契約者貸し付けを目いっぱい借りてしまっています。
自己破産でなく、個人再生をした場合にどのような扱いになるのでしょうか?
生命保険は全部解約になりますか?
【ご回答】~弁護士(新潟市・新潟県)から~
個人再生における生命保険の取り扱い
個人再生において生命保険が問題となるのは、その生命保険に財産的価値がある場合のみです。
まず、前提として、その生命保険に解約返戻金があるかどうかが問題となります。
そもそも、解約返戻金がなければ、個人再生手続き上は、単に財産的な価値のない無関係なものということになります。
契約を継続しても解約してもなんでもありません。
個人再生をしたからといって、生命保険を解約しなければならないという決まりはないのです。
ちなみに、これは自己破産の場合も同様です。
解約しなければならなくなるのは、その解約返戻金が一定額以上になっており、それが破産管財人の報酬とか債権者配当に充てられる場合です。
ですので、解約返戻金のない生命保険は、そのまま続けてもいいですし、または、解約したければ解約すればいいです。
生命保険に解約返戻金がある場合
問題は、その生命保険に解約返戻金がある場合です。
生命保険に解約返戻金があるということは、銀行預金と同じで、いつでも現金化できるということです。
つまり、財産があるということです。
「今、解約すると、解約返戻率が低いので、損してしまうのですが。」
というのはよくある心配ですが、解約はしなくても構いません。
ただ、解約しなくても、その解約返戻金の額は、
「清算価値」
と言って、
個人再生の申立人が持っている財産として計上しなければならないのです。
そして、計上するだけならいいのですが、個人再生においては、最低返済額は、個人再生の申立人が有している財産の価格以上でなければならない、
という決まりがあるのです。
これを「清算価値保障」というのです。
ですので、例えば、生命保険の解約返戻金が200万円であるとすると、個人再生における返済額は、
200万円以上でなければならない、
とされるのです。
もっとも、個人再生においては、最低返済額の基準としては、もう一つ、総債務額基準というものがあり、これは、要するに、総債務額を一定の割合で免除した残額以上でなければならないという基準です。
ですので、もともと、総債務額基準で計算した最低返済額が清算価値よりも上の場合、清算価値基準は問題にはなりません。
具体的な例で言いますと、あなたの総債務が400万円とのことですが、総債務額基準というのは次のように定められております。
総債務額100万円未満 ・・・ 総債務額そのままを返済
総債務額100万円以上500万円以下 ・・・100万円を返済
総債務額500万円超1,500万円以下 ・・・総債務額の5分の1を返済
総債務額1,500万円超3,000万円以下 ・・・300万円を返済
総債務額3,000万円超5,000万円未満 ・・・総債務額の10分の1を返済
従いまして、総債務額基準によれば、あなたの返済額は100万円となります。
ところが、生命保険の解約返戻金が200万円であるとすると、あなたの返済額は、200万円になってしまうということです。
これが例えば、あなたの債務が例えば2000万円の場合であれば、総債務額基準によれば、あなたの返済額は300万円であるので、生命保険の解約返戻金が200万円であったとしても、返済額は300万円のままなのです。
個人再生において生命保険の契約者貸し付けを受けている場合
契約者「貸し付け」と言われるので、借金、すなわち、債権があって、これが個人再生により、例えば、
契約者貸し付け額が200万円から100万円に減額されるのか?
と誤解されている方がいますが、そういうことはありません。
貸し付けという言い方にもかかわらず、これは、そもそも、解約返戻金の取り崩しのようなものなのです。
例えば、解約返戻金200万円のうち100万円を契約者貸し付けで受けているとすれば、解約返戻金が100万円に減るだけです。
「じゃあ、契約者貸し付けを受けておけば、清算価値とかいうのが少なくなるのか!」
と思う方もいるかもしれません。
ですが、契約者貸し付けを受けると、そうだとすると、今度は、その貸し付け分が現金になるだけですので、清算価値としては変わらないのです。
~いかがでしたでしょうか。以上、弁護士(新潟市・新潟県)から、個人再生における生命保険について契約者貸し付けがある場合について、生命保険解約の必要性、清算価値基準も含めて、ご説明致しました。~