【ご相談内容】前妻の子の相続権
私と夫はともに再婚同士です。
夫には前の奥さんとの子供が1人おり、夫は今も養育費を支払っております。
私の方には子供はおりません。
この度、ようやく、妊娠することができました。
まだまだ先のことなのかもしれませんが、子供が生まれるとなると、いろいろと気になることが出てきました。
もし、夫に何か万が一のことがあったら、夫の遺産は、私と子供が全部相続するということはできますでしょうか?
おそらく、夫と前の奥さんとの子供にも相続権はあると思うのですが、何か、それをうまく事前に対応しておく方法ってありますでしょうか?
例えば、今の時点で、いくらか渡しておいて事前に相続放棄をしてもらうこととかは可能でしょうか?
また、もし、前の奥さんに万が一のことがあった場合、夫と前の奥さんとの子供は、やはり、私と夫に引き取る義務があるのでしょうか?
【ご回答】~弁護士〔新潟市(新潟県)〕からのご説明~
前妻の子供の相続人資格
ご主人から見れば、前の奥さんとの子供も実の子供ですので、もし、ご主人に万が一のことがあれば、ご主人の遺産については、その子供にも相続する資格があります。
ただし、前の奥さんとは離婚している訳ですから、今は赤の他人で、ご主人の遺産に関与する資格はありません。
ただし、もし、ご主人と前の奥さんとの子供に養育費を支払っているという事は未成年であると推察されますが、もし、未成年の間にご主人の身に万が一のことがあったとすると、奥さんは、その子供の法定代理人として関与してきます。
具体的な相続分としては、
あなたが配偶者(妻)として、2分の1
子供はその残りの2分の1を頭数で等分することになります。
生前の相続放棄・遺留分放棄
ご主人に何かがあった場合に、前の奥さんやその子供に関与してもらいたくないという心情は分かります。
ですが、生前の相続放棄というのはできません。
たまに、
「事前に、相続を放棄する念書を書いてもらえばいいですか?」
等と尋ねてくる方がいらっしゃいますが、仮にそのような書類を書いたとしても無効とされているのです。
(そもそも、前の奥さんがそれを飲むとは思えませんが。)
事前に前の奥さんやその子供も関与が将来的にないようにしておきたい、と考えるのであれば、制度的にとり得る手段は、「遺留分の放棄」をしてもらって、ご主人に遺言を遺してもらうことです。
「遺留分」とは、たとえ、遺言で、相続分はゼロにするとされたとしても、法律上認められる相続財産に対する取り分のことを言います。
ですので、前妻の子に、その遺留分を放棄しておいてもらい、ご主人が、前妻の子の相続分をゼロにするという遺言を残しておけば、実質的には、前妻の子が相続放棄をしたのと同じことになります。
しかし、すでに述べましたように、養育費を支払っている期間中、つまり前妻の子供は未成年と思われますが、未成年の間においては、法律行為はできません。
そこでその場合には法律行為は親権者、すなわち、前妻が行うことになります。
仮に、お金を渡すなどして、前妻が遺留分放棄について納得しても、実際に遺留分を放棄させられるのはその子供になりますので、裁判所がかなり慎重な判断をするでしょう。
遺留分放棄について説明が後になりましたが、遺留分放棄は裁判所に対して申し立てをするものであり、裁判所が関与する手続きなのです。
そして、遺留分放棄が認められるためには、裁判所の許可が必要になるのです。
裁判所が許可する判断要素としては、
・遺留分放棄する理由が合理的であるか?
・相応の代償があるか?
等があります。
ですので、「いくらか渡して」遺留分放棄をしてもらうということは有り得るのですが、金額面で考えますと、かなりハードルは高いと思われます。
夫と前妻の子の扶養義務を負うか
前妻に万が一のことがあった場合、あなたにとってみれば、前妻と夫との間の子であるとは言え、他人です。
他人ですので、あなたに扶養義務はありません。
他方、ご主人は、前妻との間の子も自分の子供であることに違いはないですので、ご主人には扶養義務があります。
それに、現実問題として、ご主人も、そのような事態になったら、
「悪いけど、うちで引き取らせてくれないか?」
と、あなたに頼んでくると思われます。
したがって、結果としては、事実上、あなたも面倒をみることになるという可能性はあります。