【ご相談内容】個人再生を失敗した後はどうなる?
(前回の続き)
友人のお兄さんが個人再生を失敗して、その後、
1)任意整理?個人整理?(言葉が違っていたらすいません)
2)給与所得者再生
3)自己破産
をどれを選ぶかを弁護士から迫られて、
「住宅を維持したい」
ということから、3)自己破産は選べず、
1)任意整理(個人整理)か、
2)給与所得者再生か、
のうちのどちらかを選ぶしかなかったけれども返済額がほぼ同じなので、
「1)任意整理(個人整理)」
を選んだそうです。
個人再生を失敗したら、「1)任意整理(個人整理)」が普通でしょうか?
【ご回答】~弁護士(新潟市・新潟県)から~
個人再生は破産に移行?
前回、個人再生の失敗には、
1)個人再生の要件を満たしていない、
2)住宅ローン特別条項を利用するにあたり金融機関との協議が上手くいかない
3)個人再生履行テストの失敗(予想される再生計画上の月々の弁済額を支払えない)
4)(小規模個人再生の失敗)書面決議で債権者の過半数に反対される
5)再生計画の認可が下りない(履行可能性がない)
等々のパターンがあると申し上げましたが、それで、個人再生が失敗に終わった、すなわち、
『裁判所の再生計画案の認可までたどり着けなかった場合』
に、どうなるかと言いますと、強制的に、個人再生が破産に移行させられると勘違いしている人がいるようですが、そういうことはありません。
要するに、個人再生を申し立てる前の状態に戻ります。
つまり、借金が残って、債権者から督促される状態にまた立ち戻るわけです。
ですので、その状態を放置しておくこともできませんので、再度、何らかの借金の整理のための手続きをとらないといけないわけです。
そこで問題となるのは、どういう理由で個人再生が駄目になったかによります。
給与所得者等再生も失敗?
給与所得者等再生の最低弁済額
個人再生には、「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」があるのですが、ほとんどの方が、 「小規模個人再生」 を選択します。
それは、 「給与所得者等再生」の最低弁済額が、小規模個人再生の場合よりも最低弁済額が高くなることが多いからです。
「給与所得者等再生」の最低弁済額 は、可処分所得の2年分以上とされております。
可処分所得とは、月々の収入から生活に必要な支出を引いた残りの額のことで、要するに、月々の余剰の2年分を最低返済しなければならないとされているのです。
「なあんだ、だったら、毎月の生活は結構、余裕がないから、その2年分と言っても大したことはない」
と安心してはいけません。
大体の場合には、可処分所得を計算して、依頼者の方にお見せすると皆さん、驚かれます。
「えー?こんなに可処分所得があるはずないんですけど」
「可処分所得の2年分って、すごい返済額が高くなるじゃないですか!」
どうして、 「給与所得者等再生」の最低弁済額が、 高くなるのかというと、それは、給与所得者等再生の可処分所得の計算の仕方によります。
給与所得者等再生の可処分所得の計算
可処分所得とは、月々の収入から生活に必要な支出を引いた残りの額(余剰)のことなのですが、実際の余剰と計算上の余剰とでは数字が変わってくるのです。
どういうことかと言いますと、 例えば、年収が500万であるとして、現実には月々いろんな支出をすると年間100万円しか余剰がないとします。
しかし、生活に必要な支出の額は、政令で決められてしまっておりますので、本当は年間400万円の支出があったとしても、政令で年間200万円ときめられてしまっているとすると、余剰が300万円でてきます。
この2年分ですから、600万円が最低弁済額になるわけです。
ですが、現実の生活で、200万円しか余剰がないのに、600万円あるはずだ、と言われても無いものは払えないですよね。
そのため、皆さん、大概、小規模個人再生を選ぶのです。
ところが、その小規模個人再生が失敗した場合には、困ってしまいます。
定期収入がなくなったために小規模個人再生が失敗した場合
例えば、個人再生しようと思った矢先に会社をリストラされてしまったとか、いうことですと、
「給与所得者等再生」を利用することはできません。
「給与所得者等再生」もあくまで個人再生手続きであるので、定期的な収入は必要となるからです。
個人再生の返済額計算と履行可能性
また、例えば、
月々の支払い(返済)に回せるお金が少なすぎて、返済計画の「履行可能性」がない、
と判断された場合ですと、任意整理は通常、難しくなります。
任意整理は、強制的な債権カット等がないため、月々の支払額はたとえ支払い期間を延ばしたとしても、それなりに月々の支払額が必要となるからです。
そのご友人のお兄さんが、個人再生が失敗して、「給与所得者等再生」か「任意整理」を選択しようとした、ということは、月々の支払いについてはかなり余力がある状態だったのではないかと推察されます。
加えて、「住宅を維持したい」ということだったので、自己破産を選択してしまうと、通常は、
破産管財人に住宅を売却されてしまう、
あるいは、
住宅ローンがついている場合には、住宅ローンの支払いが自己破産の効果としてできなくなり、その結果、住宅ローン会社ないし銀行(保証会社)が競売にかけられててしまう、
ということで、最終的に、「任意整理」に至ったものと思われます。
まとめますと、個人再生が失敗したのちに、どのような選択肢があり得るかは、その方の経済状況、個人再生を失敗した理由、住宅維持の意欲の強さ、等により異なりますので、そこは、担当弁護士とよく協議してみてください。
~いかがでしたでしょうか。以上、弁護士(新潟市・新潟県)から、個人再生の失敗の後に、どのような選択肢(破産、任意整理、給与所得者再生)があり得るかについて、ありうるパターンをご説明いたしました~