【ご相談内容】債務免除、財産保持、免責不許可事由

個人再生のメリットを教えてください。

さきほど、司法書士事務所の無料相談から帰ってきました。

今月中に申し込めば、司法書士の手数料が10%減額されるそうなので、早く結論を出さないといけないのです。

正直、自己破産したら、家を手放さなければならないという、デメリットはわかったのですが、任意整理という手続をしろと言われました。

1件5万となんとか手数料というのが別途かかるらしく、私は、クレジットカードやらサラ金やらで、7社あるので、正直、35万円って結構するなと感じております。

しかも、借金はほとんど減らないそうです。

「よその事務所と違って、うちは交渉力があるので、なんとか、遅延損害金を3割ぐらいカットさせます」

なんて言っておりましたが、逆に、

「それだけですか?」

って言ってしまいました。

私が、個人再生とか特定調停とか、もう少し、なんとかならないか、と尋ねたところ、個人再生については、

「ブラックリストや官報に載って社会的信用が下がるからやめた方がいい」

と言われました。

でも、ブラックリストや官報に載ってもいいからやってとお願いした場合、いくらでやってくれますか、と言ったら、70万円って言われました。

それで、結局、任意整理がいいですよって言われたんですけど。

どうすればいいですか?

個人再生って、ブラックリストや官報に載ること、費用が高いことなど、デメリットだらけなんですか?

メリットはないんですか?

【ご回答】~弁護士(新潟市・新潟県)から~

デメリットのない債務整理手続きはない

よく「メリットは何ですか?」、「メリットを教えて下さい」というご質問はあるのですが、

基本的に、債務整理をする段階ですので、何かしらの不便、面倒くささ、費用がかかる等の問題・デメリットはあります。

借金問題で苦しいけれども、

・手間をかけたくない

・ストレスも感じたくない

・費用もかけたくない

等々の嫌だ嫌だを言っていると何もできません。

個人再生にしても、そんなものしないで普通に暮らせた方がいいに決まっております。

ですので、メリットというのは基本的には、個人再生をすると、どのような効果が得られるのか?ということであるとお考え下さい。

また、個人再生のメリットというのは、他の債務・借金の整理の方法、例えば、任意整理とか自己破産とか、と比べた場合の違いだと考えてください。

個人再生のメリット

1)債権者からの直接の督促が止まる

ただし、これは、司法書士や弁護士等の代理人を依頼するのであれば、任意整理だろうが、自己破産だろうが、結局、あなたに代理人にがついたことになるので、「直接」の連絡はいかないようにはなります。

他方で、ご自身で個人再生手続きをする場合には、裁判所に申し立てをして、裁判所から各債権者に対して、

「この人は、裁判所に個人再生の申し立てをしたので、裁判所に債権の内容を送ってください」

という通知が行くまでは、督促は止まらないです。  

2)強制執行(給与差し押さえ等)の防止・停止

いつまでも返済を怠っていると、そのうち債権者の方から、訴訟(裁判)が提起されます。

そして、実際、一旦、訴訟を起こされた以上は、名義を偽って第三者が借りた等の事情でもない限り、あなたに支払いを命ずる判決が出されます。

さらには、判決が出ても支払えないでいると、次に、その判決に基づいて、強制執行がなされます。

強制執行とは、給与の差し押さえ、家の競売などのことです。

給与の差し押さえの場合、勤務先に、裁判所から、あなたが差し押さえを受けたので、給与を直接、債権者に支払ってください、という命令が送られてしまいます。

ですが、個人再生の開始決定が出された後は、そのような強制執行はなされません。
 
また、万が一、個人再生の手続が開始される前に強制執行がなされた場合であっても、開始決定がなされれば、その強制執行は停止されます。

これは、自己破産手続きの場合も同様です。

他方で、任意整理の場合には、強制執行がなされるリスクは常にあります。

3)大幅な債務の免除(借金減額)

個人再生は大幅な債務の免除(債権カット、借金減額)が裁判所の決定により認められます。

任意整理との比較

これは、任意整理、すなわち、個別に債権者と交渉したうえで、債務の返済期間を延ばしてもらう手続きと比べた場合のメリットになります。

どういうことか申しますと、任意整理の場合には、それこそ、交渉事なので、極端な話として債権者側が、

「そんなに苦しいなら、大幅に債務を免除しますよ」

と言ってくれれば、個人再生と同じ結果が得られるのですが、債権者も損したくないので、そんな簡単に免除などしてくれません。

支払い期間が長くなって、それによって、月々の返済額を少なくしてもらうのが関の山です。

ちなみに、

「任意整理でも借金が大幅に減額されました」

「任意整理をしたら負債がなくなった上にお金も返ってきました」

というのは、過払い金、すなわち、利息の払い過ぎがあった場合のケースであり、そのような事情がないのに、任意整理で、大幅な減額を債権者に飲んでもらうのは困難です。

自己破産との比較

他方、自己破産と比較すると、自己破産の場合には、原則、全額免除になるわけですので、大幅な免除とはいえ、全額免除されない個人再生について言えば、全額免除されない、ということがデメリットになるとも言えます。

4)財産を処分(売却・解約)されない

個人再生は、財産を処分(売却・解約)することを予定していません。これは、自己破産との比較ですが、自己破産の場合には、手持ち財産をすべて手放すことが原則です。

手元にある財産はすべてあきらめるので、借金の支払い義務をすべて免除してください、というのが自己破産の本質です。

ですが、個人再生の場合には、今ある財産は手元に置いたままで、借金の負担を軽くして、再生を図ろうという手続きですので、家も生命保険もそのままです。

財産として車がある場合

車については、車のローンがある場合には、その債権者との関係で難しい場合があります。

車を裁判所から売却しろとは言われませんが、車のローンを支払うことを禁止されますので、結局、ローン会社が車を引き揚げると言ってくるからです。

財産として家がある場合

ですが、家についてはたとえローンがついていても、住宅ローン特別条項を使うことにより、保持することができます。

ただし、ローンのついていない家というのは結構な財産的価値がありますので、返済額との関係で問題になる場合があります。

清算価値保障

個人再生においては、その返済額を決める際に、持っている財産の価値相当分の金額は最低返済してください、というルールがあるからです。

このルールを清算価値保障と言います。

任意整理との比較

任意整理との比較で言えば、任意整理においても、債権者から財産処分をすることを求められるわけではありませんので、どちらも財産を保持し続けることができます。

5)免責不許可事由

これは、自己破産との比較になりますが、個人再生の手続きにおいては、免責不許可事由というのがありません。

他方、自己破産の場合には、浪費・ギャンブル・換金行為等を行った場合には、免責不許可事由に該当するとして、破産を申し立てたとしても免責されない(借金は残ったままにする)という規定があります。

他方で、個人再生の場合には、浪費・ギャンブル・換金行為等を行ったから、個人再生において、債務減額を認めないというような規定はありません。

任意整理との比較

任意整理との比較で言えば、任意整理は、そもそも、法律上の制度とかではなく、単なる債権者との交渉ですので、免責不許可事由等は問題となりません。

6)否認権

これは、自己破産との比較になりますが、自己破産の場合には、例えば、親しい友人にだけ、親族にだけお金を返してしまった、という場合には、偏頗弁済といって、特定の債権者だけに返済したとして、問題視されます。

そして、破産管財人が、結局、その返済した相手である親しい友人や親族に受け取ったお金を返すように請求してきます。

これを否認権の行使と言います。

それでも、お金を返さないと、破産管財人が訴訟を起こしてくる場合もあります。

受け取ったその友人や親族は、裁判まで起こされてお金を取り戻されたと、むしろ、迷惑しただけです。

他方、個人再生においては、このような否認権の行使はありません。

個人再生の場合には、偏頗弁済があるときは、清算価値といって、もっている財産が返済分だけ減っているけど、減っていないものとして扱われるだけです。

場合によっては、個人再生における返済額がそれだけ増えるかもしれないですが、その友人や親族が直接、何かを請求されるということはありません。

~いかがでしたでしょうか。以上、弁護士(新潟市・新潟県)から、個人再生を行うメリットと言いますか、他の任意整理ないしは自己破産との比較において、個人再生の特徴をご説明いたしました。~

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