【ご相談内容】単身赴任と個人再生の裁判管轄
新潟市内にマイホームを買っており、妻と子供3人が住んでおりますが、私は住んでいません。
私は、単身赴任で東京に来ており、会社の借り上げマンションに住んでいるのです。
妻には内緒で、東京でいわゆるアイドルにはまってしまい、週末もあっちこっちの地方に遠征をしておりました。
今思えば、ひどい話ではありますが、そのせいで、ほとんど新潟にも帰っておりませんし、新潟講演のときさえも、新潟のマイホームに戻らなかったので、家族は私が新潟にいたことさえ知りません。
当然ながら、小遣いだけでは到底まかなえず、キャッシングや消費者金融でお金をまわしておりましたが、もはや限界です。
しかも、我ながら、この年でこんなことでお金を使ってしまい、当然、浪費ですよね?
ただ、なんとしても、新潟のマイホームだけは守らないと、妻や子供たちには顔向けできません。
個人再生をする際に、できればですが、
1)東京の東京地方裁判所でできないでしょうか?新潟の新潟地方裁判所でないと駄目ですか?
2)新潟のマイホームは、私が住んでいなくても個人再生特則の対象になりますか?
【ご回答】~弁護士(新潟市・新潟県)から~
管轄が、東京地裁か、新潟地裁か
実は、そもそも昔は、東京地裁は、どこの県の事件も受け付けておりました。
ですので、東京地裁に、北海道だろうが、東北だろうが、九州だろうが、沖縄まで、申し立てが受け付けられていたのです。
ところが、平成27年から管轄の判断が厳しくなり、東京地裁に申し立てをするためには、
住民票上の住所が東京都にある
勤務地など経済生活の拠点が東京都にある
東京地裁に管轄があると認めるべき他の事情がある
というどれかに当てはまらないと受け付けてもらえなくなりました。
しかも、東京都と言っても、裁判所は、霞が関と立川(立川市)の2か所にあり、東京でも23区でなければ、管轄は東京地方裁判所立川支部になるのです。
あなたの場合には、新潟でなければよいのでしょうが。
ですので、あなたの場合には、東京で勤務しており、住民票がどこにあるのか存じませんが、少なくとも、
「勤務先の所在地」
が東京にありますので、
「経済生活の本拠が東京都にある」
とは言えるので、東京地裁に個人再生の申し立てをすることは十分可能です。
単身赴任と個人再生の住宅ローン特則
住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を適用する要件の1つとして、
その住宅が居住の用に供されるものであること
すなわち、
個人再生を申し立てる人が居住している自宅でなければならない
という要件があります。
ですから、形式的に考えれば、単身赴任しているということは、別の場所に住んでいて、住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を適用しようとする【その住宅】に住んでいないわけです。
したがって、そのような住宅は、住宅ローン特則(住宅資金特別条項)の対象とはならない、ということになりそうです。
生活の本拠とは
ですが、単身赴任者にとっては、その自宅こそが生活の本拠です。
単身赴任が終了すれば、その自宅に戻って居住することになるわけです。
単身赴任と出張の違い
そもそも、「単身赴任」って、何なのか?「出張」と何が違うのか?を考えてみましょう。
例えば、1週間の地方に行く場合ですと、これは「出張」であることは、誰も異論がないでしょう。
それが1カ月の海外の場合でも同様でしょう。
それが6カ月、9カ月、となるといかがでしょうか?
これは「出張」と呼ぶべきなのか、「単身赴任」と呼ぶべきなのか、微妙になってきます。
要するに、仕事の都合でどこかに行っているだけであれば、少なくとも、個人再生の場合には、住宅ローン特則(住宅資金特別条項)が適用されると考えられます。
~いかがでしたでしょうか。以上、弁護士(新潟市・新潟県)から、個人再生の裁判管轄の問題(東京・新潟の事例)及び住宅ローン特則(住宅資金特別条項)と単身赴任の問題(居住の用に供する住宅要件)についてご説明致しました。~