【ご相談内容】個人再生の家賃と賃貸契約契約解除

新潟で施設の警備の仕事をしており、前職はタクシードライバーでした。

タクシードライバーをしているときには、本当にストレスが溜まっていました。

特に、酔ったお客を乗せた際には、酷い暴言、時には、後ろから座席を蹴られて、生命の安全の危機を感じたことすらあります。

ですので、夜勤明けには、ドライバー仲間と飲みに行って、しかも、そのあと、パチンコ・競艇に行くという生活をしてしまい、借金を膨らましてしまいました。

何のために、タクシー乗っていたのか今となっては自分の思考回路が馬鹿になっていたのですが、結局、そういう生活から足を洗って、今は、施設警備の仕事をして、穏やかな生活を送れております。

ただ、借金は返済できておらず、しかも、うちの警備会社は破産すると首になるのです。

「バレなければ大丈夫だよ」

って、仲間からは言われておりますが、何がどこからバレるのか分からないので、個人再生という事で借金の解決ができないかと。

ただ、問題は、今のアパートの家賃が月によっては支払えないこともあり、分割で滞納分を支払っているので、このまま個人再生をするとどうなるかが心配です。

司法書士事務所に行ったら、

任意整理

といって、

今の支払いを分割払いにして5年間(60回)で支払う、

という方法はどうかと言われました。

しかし、その金額では、家賃の滞納も抱えて支払い続けるのは正直無理です。

その司法書士事務所では、

個人再生は官報に載るからやめた方がいい

と言われましたが、支払えないものは無理なので、相談だけで終わりにしました。

(あと、相談中に、やたらと相談の対応の人(多分、司法書士ではない人)が電話だなんだと中座するのも気になりましたし)

話がそれましたが、要するに、個人再生したらアパートを追い出されるのではないかというのが心配事です。

ちなみに、個人再生をする前に滞納をなくした場合には、普通に、その後は、毎月家賃を支払っていけばいいのか?も教えてください。

【ご回答】~弁護士(新潟市・新潟県)から~

個人再生の開始による弁済禁止効

個人再生をすると、その個人再生が開始した時点での債権は原則として支払が禁止されます(弁済禁止効)。

債権者が平等に支払いを受けられるようにするために、特定の債権者に支払うことは禁止されるのです。

家賃を滞納しているという事は、大家さんはあなたに対して、債権を持っているということですので、その支払いも同様に禁止されます。

そうするとどうなるかというと、大家さんから見れば、

【家賃を支払うという義務(債務)を果たしてもらっていない】

という、いわゆる債務不履行で、賃貸借契約を解除することができます。

もちろん、賃貸借契約を解除するかしないかは、大家さんの自由です。

絶対に解除しなければならない義務があるわけではないので、

「個人再生をして禁止されているのなら仕方ないですね。」

「滞納家賃はもう諦めます。」

「これからの家賃をしっかり支払ってくれればいいですよ。」

と言ってくれればよいですが、まず、そういう神のような大家さんはいないのではないかと思われます。

ですので、結論としては、個人再生を開始する前に、滞納している家賃を支払ってしまって、滞納状態を解消するしかありません。

ただ、そうすると、弁済禁止効に違反することになります。

そして、このような弁済禁止効に違反した返済を偏頗弁済と言います。

個人再生において偏頗弁済があるとどうなるか

他の債権者への支払はできていないのに特定の債権者に対してのみ支払いをなすことを偏頗弁済と言います。

では、偏頗弁済をするとどうなるのでしょうか?

その偏頗弁済で支払ったお金というのは、本来は自分の手元にあったはずのお金です。

つまり、それだけの財産が手元に残っているはずだという事になるので、清算価値ということで、財産目録に計上しなければならなくなります。

分かりますでしょうか?

例えば、あなたの財産として、

貯金  100万

生命保険 20万

自動車  20万

合計  140万

の財産しか本当は持っていないのに、

貯金  100万

生命保険 20万

自動車  20万

(現金) 20万(滞納家賃の返済でなくなった現金)

合計  160万

ということで、あなたは財産を140万円ではなく、160万円持っているはずだとみなされるのです。

「それだけですか?それが何か?」

と思うかもしれませんが、個人再生においては、最低返済額は清算価値以上、 つまり、持っている財産の額以上でなければならないという決まりがあります。

これを清算価値保障といいます。

ですので、例えば、本来は、最低返済額が140万だったのに、偏頗弁済分が20万円あったとすると、最低返済額が160万円になるおそれがあります。

「だから、それだけですか?それが何か?」

「滞納家賃を支払わないでいたら家を追い出されるんだから引っ越し代払うよりいいじゃないですか」

と思われるのであれば、たしかに、それだけと言えるのかもしれません。

滞納家賃がない場合と個人再生

ちなみに、滞納家賃がない場合には、月々の家賃の支払いは、生活を維持するのに必要な費用であるので、その支払いが禁止されるという事はないです。

ですので、家賃の滞納状態を解消できるのであれば、個人再生する前にその滞納分はなんとかして解消すれば、契約を解除されて立ち退きを迫られるということはありません。

もちろん、

・これを機会に契約を解約してちょうど実家に帰ろうと思っていた、

・もともと家賃が高いとか、隣がうるさいとかで引越ししたいと考えていた、

などの事情があるのであれば、滞納家賃を抱えたまま、個人再生に突入すると、滞納家賃については通常の債権カットに対象になります。

~いかがでしたでしょうか。以上、弁護士(新潟市・新潟県)から、個人再生における滞納家賃の取り扱いについて、それを仮に支払ってしまった場合の効果(偏頗弁済)も含めて、ご説明致しました。~

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