【ご相談内容】個人再生は個人事業も対象?
防水及び外構工事の個人事業を営んでおります。
先日、割と大きめの元請けが倒産してしまい、私もそこで引っかかってしまいました。
もちろん、私も外注さんや下請けさん等の協力業者さんに支払うべきものがあったので、無理して支払いましたが、そのおかげでかなりの借金を抱えてしまいました。
銀行の緊急融資もこれまでは利息の支払いだけでよかったのですが、再来月から元本の支払いが始まりますので、もう無理です。
おかげさまで、今のところ、建設業界は仕事に困ることはないのですが、金が回らないです。
ただ、今の仕事以外をやる自信もなく、仕事は続けていきたいのですが、そうすると、破産はできませんよね?
自己破産をすると、今の売掛(手形)もとられちゃうし、車も持っている倉庫も全部、売っぱらわれちゃうんですよね?
先日、司法書士のホームページに民事再生できますってあったんで、その無料相談を受けたんですが、民事再生のことについて、いろいろ聞いてもモゴモゴして答えてくれません。
それどころか、自己破産して一からやり直した方が楽だとか説教し始めたんで、頭来ちゃいました。
【ご回答】~弁護士(新潟市・新潟県)から~
売上があるのなら個人再生を検討
仕事があるのであれば、どれくらい借金があるかどうか分かりませんが、民事再生をしたらいかがでしょうか?
民事再生そのものは費用も手続きも大変かもしれません。
個人事業主なら、個人再生のうちの小規模個人再生ができるかもしれません。
まず、個人再生の説明からします。
個人再生というのは、借金等が返せない人が、借金の総額の大幅な債権カット(債務圧縮・負債減額)を受けて、債権カットした後の少なくなった債務を原則として3年かけて返済する計画をたてて、債権者の意見を聞いて、裁判所の決定を受けて返済するという手続きのことをいいます。
個人事業主の場合に、大概、問題になるのは、会計資料です。
多くの方が、どんぶり勘定で行っているため、なかなか、再生計画を立てるのに手間がかかるということがあります。
その点は、いかがでしょうか?
民事再生は、再生手続きを受けた後に、きちんと返済計画に従って返済していくことが大事です。
継続的な収入、ないしは、その収入に基づく履行可能性(つまり、きちんと返済できるという見込み)をきちんと示さないと、裁判所の認可がおりません。
個人事業主の場合の売掛・買掛の扱い
また、あなたの場合には、在庫はそんなにないのかもしれませんが、売掛・買掛があるでしょう。
実は、個人再生というのはその手続きが開始した時点で、売掛は資産になり、買掛は原則として支払いをストップしなければなりません。
もちろん、共益債権と言って、事業継続に必要な支払いは認められるのですが、慎重な取り扱いが必要となります。
したがって、民事再生(個人再生)を申し立てるタイミングと、申し立てる際に、何を共益債権にできるのかを、よく、弁護士と打ち合わせの上で行ってください。
売掛(金)と個人再生の清算価値
売掛について言いますと、売掛は財産なので、個人再生をおこなう場合、
『申立人が有している財産相当額以上の返済をしなければならない』
という原則があるのです。
建設業界等の民事再生でよくあるのは、工事一式などとして、額面が大きな金額で請け負うと、その請負金額が丸ごと財産として計算されます。
すると、手元にキャッシュが入ってきていないのに、民事再生の再生計画の支払(返済計画上支払わなければならない)金額だけがやたらと高くなるということです。
これをやってしまうと、あとあと支払いがきつくなってしまいます。
手間(工賃・人工)でもらうようにするとか、
細かく出来高都度払いにしてもらうとか、
取引先さんと協議しておかないといけません。
買掛(金)と個人再生の偏頗弁済
それから、買掛についてですが、買掛も実は債務(負債)ではあるので、再生債権として一旦支払いをとめて債権カット(債務免除)するのが原則なのです。
「そんなことしたら、材料屋さんや協力業者さんが逃げちゃうよ!」
って思いますよね。
多分、逃げるでしょう。
わざわざ、カット(免除)されると分かって掛けにしてくれる人はいません。
ですので、払うしかありません。
しかし、払ってしまうと、偏頗弁済と言って、本来は支払ってはいけないお金を支払ったということになり、
「その分、財産が目減りしたのだから、あんたが穴埋して代わりに支払え」
ということになり、これまた返済総額が大きくなる可能性があります。
しかも、債権者平等の原則に違反する行為でもありますので、あまり額が大きいなど程度がひどいと、再生手続きが棄却されかねない危険な行為なのです。
買掛(金)と個人再生の共益債権
ですので、この種の仕事に必要な支払いは、
個人再生申し立て後、開始決定前は
「原材料の購入その他再生債務者の事業の継続に欠くことができない行為」
であるとして、裁判所の許可を得て、支払います。
開始決定後は、
「再生手続開始後の再生債務者の業務、生活並びに財産の管理及び処分に関する費用の請求権」
であるとして、支払います。
そして、これらを「共益債権」と言います。
「共益債権」は、その債権を支払い、事業を継続させることが債権者の共同の利益になるから、支払いを継続することが認められるのです。
以上、生きている(動いている)事業を個人再生に突っ込むのは、本当に、いろいろ気を配らなければならないことがあるので、大変です。
上記で、
「よく、弁護士と打ち合わせの上で行ってください。」
と書きましたが、別にうちが弁護士事務所だから言っているわけでなく、その性質上、弁護士に依頼してやってもらった方がいいですよ。
司法書士は代理人になれず、書面作成のサポートをするのみなので、個人事業主の方の民事再生は無理だと思います。
~いかがでしたでしょうか。以上、弁護士(新潟市・新潟県)から、個人再生とは?個人事業も対象?となるのかについて、個人事業主が個人再生する場合の注意すべき点をいくつか述べて、ご説明いたしました~