【ご相談内容】個人再生の選択と遠方の弁護士への依頼
新潟県十日町市で製造工場に勤務しています。さして大きな会社ではありませんが、勤続年数は26年になります。
田んぼもあります。私と母親でなんとか田んぼもやっています。
大変申し訳ないことですが、とあることから、スナック通いにハマってしまいまして、結構な額の借金ができてしまいました。
借金の支払いがどうにも苦しくなり、ついに会社の上司である専務に給与の前借を相談したところ、
「そんなことをしても焼け石に水だからやめとけ。」
「それをするなら、弁護士事務所に行って借金の整理をしてもらえ。」
と言われて、専務のお知り合いの弁護士に相談してきました。
ただ、同じ新潟県内ではあるもののちょっとその弁護士先生の事務所が遠いところにあるので、
「これから通うのは大変だなあ」
というのが正直な感想です。
それに、その弁護士さんからは、
「自己破産しないと駄目だ」
と言われました。
そうすると、家も田んぼも長男である私の名義になっているのですが、
「母親に買ってもらわないと駄目だ」
と言われました。
「だけども、母親にそんな金はない」
と言うと、
「母親が買えないんだったら、よそに二束三文で売られてしまう」
とのことでした。
そんなことになったら、母親は卒倒してしまうと思います。
なので、専務に、
「自己破産だけは勘弁してください」、
「退職金があると思うので、それを前借させてください」、
と再度、お願いしましたが、結果は、退職金は保険?だか共済?だかで前借の対象にならないと言われてしまいました。
個人再生というものがあるということで、自己破産とは違って家も田んぼも失わないで済むのであれば頑張りますので、なんとかお願いできないでしょうか?
【ご回答】~弁護士(新潟市・新潟県)から~
個人再生を依頼する事務所が家から遠い件
自己破産が嫌だというのですから、その遠いという弁護士さんにはお願いできないのかもしれませんが、それにしても、個人再生を行いたいという事務所が遠くても頑張れるのでしょうか?
とは言っても、個人再生をするのに何度も何度も弁護士事務所に足を運ばなければいけないわけではありません。
今は、インターネットという便利なものがありますので、書類のやりとりとかも以前に比べれば、数段楽です。
電話、郵便、FAX、携帯、スマホ、インターネット(PC)等の環境によっては、弁護士さんの事務所に足を運ぶ回数は極力減らせるはずです。
また、場合によっては、弁護士さんが家の近くまで足を運んでくれることもあります。
中には、弁護士事務所に入るところを知り合いに見られるとマズいということでわざわざ自分の家や職場から、離れた弁護士事務所に依頼するという場合もあります。
ただ、うちの事務所でやるにしても、新潟市に少なくとも一度は足を運んでいただく必要があります。
車や高速バスだと、十日町~新潟駅で約2時間30分かかります。
電車だと、例えば、
十日町
↓ JR飯山線 越後川口行
越後川口
越後川口
↓ JR上越線 長岡行
長岡
長岡
↓ JR信越本線 新潟行
新潟
こんな感じです。まあ、これでも2時間30分ぐらいです。
自己破産ではなく個人再生を選ぶ理由(財産を手放せない)
家や田んぼを手放せないから、自己破産ではなく個人再生をやりたいということですが、確かに、個人再生であれば、所有の不動産を処分することは不要です。
ですが、所有不動産相当額は最低弁済額として分割して返済する必要があるのですが、その点は大丈夫でしょうか?
お手持ちの不動産の価値が分からないですが、仮に、それらが500万円である、という場合には、その500万円が最低弁済額になり、その金額を3年ないし5年で返済する可能性もあります。
つまり、個人再生では、所有財産を手放さずに大幅に債務が免除されるとされているのですが、その代わりに、所有財産分は最低でも返済しなければならないのです。
仮に、負債が400万円であったとして、もし不動産も何も財産がなければ、返済額は100万円です。
ですが、お持ちの不動産が500万円である場合には、最低弁済額は500万円になり、ただし、借金の額を超えて返済という事はあり得ませんので、結局、最低弁済額は400万円になるのです。
分かりますか?
難しい言葉で言うと、これを清算価値保障と言うのです。
まあ、言葉の問題はどうでもいいのですが、つまり、個人再生をしたとしても、今ある400万円の借金の額は全く減らないのです。
あんまり、個人再生をやる意味がないですよね?
他方で、もっと借金の額が大きいのであれば意味があるかもしれません。
例えば、借金の額が4000万円であるとすると、個人再生をすると、その債務の減免効果により、借金の額が400万円にまで圧縮されます。
そして、先ほどの例で不動産が500万円だとすると、最低返済額は500万円になって、結果として、もともと4000万円あった借金が結果として、500万円にまで圧縮される、計算になります。
これなら個人再生をやる意味があります。
ただ、スナック通いにハマってしまったとして、そんな額の借金になるとも思えませんが。
自己破産ではなく個人再生を選ぶ理由(スナック通い~浪費)
ちなみに、ここで、自己破産に戻るとしても、スナック通いで作った借金であるとすると、それは浪費で作った借金という事になるので、自己破産の場合には免責不許可事由にあたります。
「免責不許可事由」にあたります、ということは、自己破産をしても借金が免除されないという事です。
ただ、免責不許可事由にあたったとしても、情状により免責が例外的に許可される場合もあります。
ちなみに、自己破産にはこの免責不許可事由があるため、免責不許可事由のない個人再生を選ぶ方もいます。
個人再生と退職金
そして、お話ですと、あなたの場合には、退職金も問題になってきます。
個人再生をする場合、退職金も、不動産と同様に財産としてカウントされます。
まだ、退職金が支給されていないにもかかわらずです。
ただ、現実には退職金が手元にあるわけではないので、具体的には、
「今、退職したとしたら受け取るであろう退職金の額の8分の1」
が手持ち財産としてカウントされます。
仮に、今やめたとしたら、400万円を退職金を受け取れるはずなら、その8分の1である50万円があなたの手元にあるはずだとして計算されるのです。
ですので、また仮の話で恐縮ですが計算してみます。
不動産が500万円であるとして、それに、退職金の8分の1の額50万円を足した550万円が最低弁済額になるのです。
もちろん、借金が400万円であればそれが返済額の上限ではあるので、この仮のケースでは、もはや、財産(清算価値)がいくらでもあまり意味がないのかもしれないですが。
個人再生ではなく任意整理を選ぶ理由
このように、もし、個人再生をしても借金が全く減額されないのであれば、個人再生よりも任意整理、つまり、
債権者に頼んで、借金の返済額を長くしてもらう手続き
をする方がよいです。
おまとめローン等もないわけではないですが、任意整理の良い点は、将来の支払い分については、利息がかからない点です。
そして、個人再生の場合には、どんなに長く返済期間をとったとしても5年が限界ですが、任意整理の場合には、7年ぐらいの長期を認めてもらえる場合もあります。
以上、要は、実際の借金の額と、不動産の値段及び退職金の額によります。
具体的な話はそれからです。
まずは、
必要な書類(借金の額が分かる書類、不動産査定書、退職金証明書)
を準備して再度、ご相談してみてください。
~いかがでしたでしょうか。以上、弁護士(新潟市・新潟県)から、個人再生と退職金について、個人再生を依頼する弁護士が遠方であることや、自己破産ではなく個人再生を選ぶ理由(財産を手放せない・浪費)、清算価値(不動産・退職金)を含め、ご説明致しました。~