【ご相談内容】退職(金)と個人再生
前回の続きです。
新潟県十日町市で製造工場に勤務しています。
家も田んぼも長男である私の名義になっているのですが、近所の不動産屋に見てもらったところ、
「田んぼは値段がつかない」
と言われ、
「自宅の建物もすごく古くて値段がつかない」
「むしろ解体するのにお金がかかる」
と言われ、土地についても、
「70~80万ぐらいにはなるけれども、家を解体する費用を考えると、結局、10万程度しか支払えない、と言われました」
何やら悲しい話ですが、個人再生をするには、その清算価値とやらは、10万程度ということですね?
それから退職金が問題になると言われていたので、また専務に確認したところ、
驚いたことに、
「退職金制度はない。」
「ただし、会社では従業員に保険をかけているので、辞める時点の功績でその保険を解約して支払うこともある。」
「退職金がでるかどうかは正式に退職届を出してから、取締役で相談して決めるので、辞める前では何も言えない。」
と言われてしまいました。
そういうわけで、「退職金証明書」というものはないそうです。
だけど、帰りがけに専務からは誰にも言うなということでこう言われました。
「実は、会社も不景気で、近々、リストラがある。」
「早期退職もあって、届け出順で20人以内なら早期退職金制度がある。」
「勤続年数かけるいくらかはまだ決まっていない」
と言われました。
借金は600万円です。
なお、個人再生をするにも金がかかるし、自分もリストラの対象にならないとも限らないので、早期退職に応募しようかとも考えています。
ですが、退職金は8分の1でよいのですよね?
【ご回答】~弁護士(新潟市・新潟県)から~
退職金制度がない場合~退職金証明が取れない場合
個人再生をする場合には、退職金の制度があるかないかをチェックする欄があるので、あなたのケースのように退職金制度がないのであれば、それにチェックすればよいだけです。
ただ、場合によっては、
「退職金がないなら、『ない』ということを会社に証明してもらってください」
と裁判所から言われる場合があります。
特に決まった書式はないので、例えばですが、
___________________________
当社においては、退職金制度は設けられておりません。
令和 年 月 日
株式会社 新潟
総務担当 印
___________________________
というような書類に会社の代表印だとまた手続きが大変というか騒ぎになるでしょうから、総務とか人事担当の方の印をもらうとかでも、ぎりぎり、なんとかなると思います。
早期退職に応じる場合の個人再生への影響
退職金というのは、個人再生の手続きを行っている時点では、そもそも、退職金ができるかどうかが不確実です。
退職金制度を設けていると言っても、その会社自体が倒産してしまう場合があります。
また、公務員等の場合には、勤務先が倒産することはないかもしれませんが、財政赤字でどうなるかも分からないですし、懲戒解雇で勤務先をやめざる得ない場合、も理論上は考えられます。
(あくまでも理論上です。縁起でもない話ですが。)
ですが、最大の理由としては、そもそも、そのお金が手元にない、ということです。
貰える可能性があるお金であり、財布の中に入っているわけではないので、その分を支払えと言うのは酷な面があるのです。
ですから、
8分の1
だけで計上するわけです。
ちなみに、なぜ8分の1かというと、もともと、退職金は、4分の3は差押禁止です。
つまり、4分の1だけが差し押さえできるわけです。
したがって、もともと、4分の1しか差し押さえできないところを、さらに、 その半分ということで、8分の1となっているわけです。
ところが、早期退職に応募するなどして、退職することが確定していて、退職金が支給されることが確実になるとすると、支給の不確実性を理由に、8分の1にすることができなくなるので、原則に戻り4分の1を計上することになります。
さらには、実際に、退職金が支払われて、銀行に振り込まれると預金となるので、全額を計上しなければならなくなるというわけです。
最低弁済額と清算価値のまとめ
借金の総額が600万円だということですので、
500万円超1500万円以下 は 借金総額の5分の1
により、負債総額の5分の1である120万円が最低弁済額となります。
そこで、清算価値としては、10万円の不動産がありますが、
もし、あなたが早期退職に応募することになるとすると、その4分の1(8分の1ではない)が清算価値に加えられることになります。
ただ、仮にですが、退職金が400万円であるとすれば、その4分の1は100万円ですよね?
とすると、
10万円(不動産・自宅の家・土地)+100万円(退職金400万円の4分の1)=110万円
となります。
退職金を合計しても110万円です。
最低弁済額の120万円よりも低いですから、もし、400万円程度の退職金であれば、早期退職に応募しても、個人再生の最低弁済額には影響がないということです。
~いかがでしたでしょうか。以上、弁護士(新潟市・新潟県)から、退職金制度がない場合(退職金証明が取れない場合)、早期退職に応じる場合の個人再生への影響(最低弁済額と清算価値)について、ご説明致しました。~