【ご相談内容】自己破産の相談をして個人再生を勧められる
新潟県小千谷市でガス関係の仕事をしています。
シフトが夜勤があったり、延長があったり、急に呼び出しがあったりと、友人・知人たちと全く休日が合わず、ストレスが溜まり、飲みに行く機会もなく、疲れ果てていました。
そこで、ついつい、土日は、ネットで馬券を買う、平日は、パチスロに行くという生活を続けてしまいました。
一旦、始めてしまうと、自分も熱くなるというか、冷静さを欠いてしまうというか、やけくそになるというか、キャッシングでお金を出しては突っ込んでしまいます。
もちろん、終わった後には、ものすごい後悔と反省です。
ですが、正直、焼け石に水というか、今更、多少、生活の節約をしても仕方がないという気持ちになり、また、ギャンブル、という生活に浸ってしまいます。
正直、別に、ギャンブルが好きでもなんでもないんです。
ここらで生活を立て直したいのです。
私がギャンブル三昧の生活をしていると言ったら、その弁護士さんは若干ひいてました。
その上で、個人再生といって、借金の返済を結局しなければならないことを勧められました。
ですが、金がないので、破産するのであって、そこでまた、借金を返済しろと言われても、無理です。
そもそも、破産すれば、借金は一切支払わなくてよくなるのに、わざわざ、
こんな個人再生とか言って、金を払わなければいけなくなる手続きを選ぶ人がいるんですか?
借金相談に行って借金を破産でどうにかしたいって言ったのに、借金を返済しなければならないって言われるなんて思いませんでした。
ギャンブルで借金を作ったのは事実ですが、何が問題なんでしょうか?
【ご回答】~弁護士(新潟市・新潟県)から~
ギャンブルによる借金と自己破産における免責不許可事由
自己破産手続きをする目的は、借金の返済義務を免除してもらうことにあります。
これを「免責」と言います。
借金を支払う「責」任を「免」除するから「免責」です。
ですが、破産を申し立てたにもかかわらず、「免責」が認められないことがあります。
それは、「免責不許可事由」というものがある場合です。
「免責不許可事由」とは、免責を許可できない事由です。
どんな事由かというと、
- 借金を作った理由が浪費である
- 借金を作った理由がギャンブルである
- 借金を作った理由が射幸(投機)行為である
- 特定の一部の債権者にだけ返済をした
- 財産を隠匿した
- 裁判所に虚偽の説明をした
- 債権者を包み隠さず言わなかった
と、このような事由がある場合には免責は許可しないとされているのです。
ですから、最初にあなたが借金相談で相談した弁護士さんも、自己破産ではなく、個人再生を勧めたのです。
「なぜ、ギャンブルが自己破産における免責不許可事由になっているんだ!」
とお腹立ちかもしれませんが、金を貸した側も、その金が返ってこない理由が、
「ギャンブルですってしまったから」
というのと、
「生活に困窮して病院代がなかったから」
というのでは、ギャンブルですってしまったと言われた方が腹がたつでしょう。
(どっちにしろ腹は立つでしょうが)
個人再生の場合には、自己破産と異なり、免責不許可事由がないのです。
ですので、借金を作った理由がギャンブルであっても構いません。
個人再生による返済は任意整理とは違う
それで、その弁護士さんからきちんと説明を受けたのか、
説明を受ける前に、「返済」という言葉を聞いただけでもう嫌になってしまったのか、詳細は不明ですが、個人再生による返済は、
今ある借金をその額のまま返済する、
ということとは違います。
今ある借金の額をそのまま返済するのは、
「任意整理」
と言って、ただ、返済期間を長くとって、月々の返済額を減らすやり方です。
聞いたことがあるかもしれないですが、
「過払い金」
と言って、その昔は、貸金業者も高い法定利息以上の利息をとっていたので、 払いすぎた利息分は減額になります。
ですが、最近は、どこの貸金業者も、法定利息内での貸し付けですので、利息の払い過ぎもなく、借金の総額はそう減額できるものではないです。
もちろん、任意整理というのは個別の貸金業者との交渉にはなりますが、例えば、
「借金の額は半分にしてください!」
とか、
「なんとか一括で払うので、3分の1で勘弁してくれませんか?」
と言っても、到底、貸金業者も受けいれません。
ところが、個人再生の場合には、総債務額の約8割がカットされます。
借金の額が大きい場合には、9割カットされることもあります。
例えば、貸金業者が、
「そんな大幅な債務の圧縮は認めない!」
と文句を言っても、裁判所が認可すれば強制的にカットになってしまいます。
例えば、あなたの借金が500万円だったとしても、個人再生の場合には、その金額が
100万円
になるのです。
400万円が免除されるのです。
ギャンブルによる借金でも自己破産が全く認められないというわけではない
たとえ、免責不許可事由があったとしても、その例外として、
「裁量免責」
というものが認められることがあります。
「裁量免責」
というのは、裁判官の裁量によって、本当は免責不許可事由があるので、免責できないはずだけど、
・その申立人が反省しているか、
とか、
・今は、まじめに経済的におかしくない生活をしているか、
とか、
・そのギャンブルに費やした金額、
・ギャンブルですってしまったお金と獲得したお金の収支、
等々を考慮して、裁判官による裁量免責が与えられるのです。
ですが、免責不許可事由がある場合には、ほとんどの場合に、破産管財人がつけられます。
そして、その破産管財人から、
「なんで、ギャンブルにハマったのか?」
「途中でやめられなかったのか?」
「どれくらいの頻度で、どれくらいの金額を毎回使っていたのか?」
「反省しているのか?」
「今はやっていないのか?」
「今はどんな生活を送っているのか?」
「家計簿をつけて出しなさい」
「この通帳にあるこの金額は何なのか?」
等々、厳格な調査がなされます。
また、この厳格な調査をするための破産管財人の報酬は、自己破産を申し立てるあなたが支払わなければなりません。
あなたがそこまで覚悟しているのであれば、自己破産でも手続きとしては間違っていないです。
~いかがでしたでしょうか。以上、弁護士(新潟市・新潟県)から、ギャンブルによる借金と自己破産における免責不許可事由、個人再生による返済と任意整理との違い、自己破産手続における裁量免責について、ご説明致しました。~