【ご相談内容】個人再生によって車がどうなるかと家族に迷惑がかかるか
前々回の相談の続きです。
新潟市内から阿賀野市の実家に戻り、実家の農業を助けながら、阿賀野市内の工場で働いております。
結局、私の場合は、実家の住宅ローンの連帯債務者でかつ建物の4分の1が私名義になってましたので、個人再生をするしか道はないようです。
問題は、車です。
阿賀野市に戻ってきた以上、さすがに車がないと仕事にも行けません。
車はローンで購入しているのですが、これも支払いをストップしてもいいのか、はたまた、住宅ローンのときに教えていただいた弁済許可の申し立てをして支払うことになるのでしょうか?
それから、これから個人再生をするにあたり、私の名義も住宅に入っているので、両親に迷惑かけないようにするために、一旦は、実家を出た方がいいのでしょうか?
【ご回答】~弁護士(新潟市・新潟県)から~
個人再生とローンで購入した自動車
個人再生というのは、自己破産と異なり、基本的に手元にある財産はすべてそのままです。
これが、自己破産となると、
家(不動産)や自動車は売却ないし競売となり、
生命保険や損害保険は解約され、
売掛等があれば回収されます。
それらはすべて破産管財人によって行われます。
しかも、売却したり、解約して、現金化されても、それらのお金は破産管財人の報酬になり、残りがあれば、債権者に配当されます。
ですので、個人再生を選択するという事であれば、原則的には、車は手元においておけるはずです。
しかし、自動車ローンを組んでいるとなると話が違ってきます。
(1)自動車ローン会社に所有権留保がある場合
ローンを組んで車を購入した場合には、車の所有権が購入者に無い場合が有ります。
所有権留保と言って、所有権は自動車ローンないしクレジット(ファイナンス)会社にあります。
ただし、銀行系のオートローンの場合などは、所有権留保をしないことが多いです。
ディーラー系や信販系の自動車ローンを利用した場合に、所有権留保となる事が多いです。
ですので、購入者は所有者ではなく、自動車ローンを支払い終わるまで、単なる自動車の「使用者」に過ぎないのです。
所有権留保があるかどうかは、車検証を確認すれば確実に分かります。
今、あなたが乗っている車の車検証の「所有者」の欄を確認してください。
そこに記載されてるのが「所有者」、「所有」権を有している「者」です。
あなたの名前が記載されていなければ、あなたは所有権を有していません。
おそらく、所有者名義は、自動車ローン会社になっているのではないでしょうか。
ただ、所有権留保と言ったところで、普段は、何も気にする必要はありません。
普通に車に乗れますし、自動車保険も使用者のまま加入することができます。
ただ、万が一、自動車ローンの返済を滞納した場合には、この所有権留保が効いてきます。
もともと、ディーラーないしローン会社は、所有者なのですから、
「ローンを返済しないのであれば、もともと車は私のものなので引きあげます」
と言って引きあげていきます。
引きあげた車は中古車として売って、その売った代金は滞った自動車ローンの返済に充てられます。
個人再生の場合、住宅ローン債権だけが特別扱いされるのであって、自動車ローンは他の借金と同様に返済が禁止になります。
自動車ローンは弁済禁止になり、弁済許可もそう簡単にはでません。
あるとすれば、個人でタクシーやっているとか、配送の請負をやっているとか、それが基本的に生活の糧になっているような場合には、例外的に認められる場合もあります。
ですが、簡単ではありません。
通勤に車を使っている場合であっても、
「車に乗らないと会社に行けないのだから、生活の糧じゃないか!」
と言われてしまいそうですが、それだけの理由では難しいです。
通勤手段の理由に加えて、自動車ローンの残額が、その自動車の価値(値段)と比べて大差ない場合には、認められる場合があります。
つまり、例えば、車の値段が50万円で、自動車ローンの残額も50万円であるとすると、引きあげられても、結局、プラスマイナスゼロなので、他の債権者にあたえる影響がないということです。
もちろん、その残自動車ローンの支払いの額によっては、月々の支払額が大きくなっていしまって、そもそも、個人再生の計画が成り立たない場合もあるということは留意しなければなりません。
あとは、誰か親族や友人知人で完済してくれる人がいれば、その人に完済してもらって、その人にリース(レンタル)料を支払っていくという方法もあります。
(2)自動車ローン会社に所有権留保がない場合
すでに述べたように、例えば、銀行等がオートローンを融資する形態の場合には、銀行等は、所有権留保をとりません。
ですので、個人再生の場合にあっては、そのオートローンは普通に債権カットの対象になります。
そして、自動車は自分のものですから、自分の財産として保有し続けることになります。
ただし、その自動車の額が結構いいお値段の場合にはどうなるかというと、個人再生手続きにおける返済額が高額になる可能性があります。
どういう事かというと、個人再生手続きにおいては、その最低返済額は、自らが有している財産の額以上でなければならないという原則があるのです。
これが清算価値保障という原則です。
そのため、本来ならば債務が大幅カットされて、例えば、返済額が100万円とされた場合であっても、車が200万円の価値を有している場合には、最低返済額は200万円になってしまうのです。
それでも、車が引き上げられ安く売られてしまうよりはマシかもしれないです。
個人再生をすると家族に迷惑がかかるから家をでるべき?
個人再生をしたからと言って、家族が代わりに支払いをしろ、とか言われることはないです。
また、個人再生をしたわけでもない家族がブラックリストにのってクレジットカードが使用停止になったりすることもありません。
そういう意味での迷惑がかかることはありません。
ただ、個人再生をすると、世帯ごとの家計の収支とかを見られるので、個人再生の必要書類においては、
家族の分の年金収入を示す書類
とか、
家族の名義の預金通帳の写し
とか、を求められる場合があります。
また、住宅ローンが連帯債務者であるということは、住宅ローン関係の資料も協力を頂く必要があります。
そういう意味では、迷惑というか手間をかけるということはあります。
家族に内緒で債務の整理をする場合などは特にこの点がハードルになります。
そういう迷惑をかけたくないと言って、あえて実家を出る人もいないわけではありません。
お金もかかるし、そもそも、実家を出ると言っても、
「何で急に?」
と、かえって驚かせてしまうかもしれないですので、どこまで秘密にするかは慎重によく熟慮してください。
~いかがでしたでしょうか。以上、弁護士(新潟市・新潟県)から、個人再生において、ローンで購入した自動車はどうなるか?個人再生をすると家族に迷惑がかかるから家をでるべきか?について、ご説明致しました。~