【ご相談内容】住宅ローン弁済許可申し立て

前回の相談の続きです。

新潟市内から阿賀野市の実家に戻り、実家の農業を助けながら、阿賀野市内の工場で働いております。

私が、やっていた「せどり」の副業がいわゆる「換金行為」にあたるかどうかは微妙な気もしますが、

よく考えたら、私は、実家の住宅ローンの連帯債務者でかつ建物の4分の1が私名義になっておりました。

なんで4分の1なのかはよく分かりません。

親父に言われるままにそうしただけです。

ですが、連帯債務者である私が破産してしまったら、親父に迷惑がかかりますよね?

それとも、現実に私が住宅ローンの支払いをしているわけではないので、大丈夫なのでしょうか?

他のローンとかは、自己破産するわけではないので、少しでも払い続けていった方がいいですか?

質問ばかりですいません。

【ご回答】~弁護士(新潟市・新潟県)から~

個人再生における弁済禁止と弁済許可

個人再生は、自己破産と異なり、手元の財産を一旦リセットするわけではなく、それらを有したまま債務(借金)の減額及び弁済をしていく手続きです。

ですので、弁済(支払い)をした方がいいのか、しない方がいいのか、なかなか分かりにくいですよね。

しかも、自己破産であれば、持ち家がなくなり、車がなくなり、と大きく生活環境が変わるので、区切りが分かりやすいですが、個人再生の場合にはそれもありません。

ですので、弁護士事務所に依頼している場合には、よく、その指示に従ってください。

(もちろん、専門の弁護士でないと指示が誤っていることがあるのでご注意)

個人再生における弁済禁止

個人再生手続きが開始されると、自己破産と同様に弁済は禁止されます。

もともと、借金(債務)が弁済できなくて(支払えなくて)、個人再生をするわけですので、

「弁済は禁止ですよ!」

「絶対に弁済しないでください」

と言われて困る人はいないとは思います。

むしろ、正々堂々と支払いをストップできるので、安心できる人がほとんどでしょう。

ちなみに、なぜ、弁済禁止になっているかというと、特定の一部の債権者にのみ弁済するのは不公平だからです。

では、全債権者に公平に支払うのであればよいのか?ということですが、弁済禁止は一律に網がかけられているので、全債権者であっても駄目です。

ただ、全債権者に公平に弁済ができるのであれば、そもそも、個人再生などはしなくても済むはずですが。

また、

「個人再生が開始する直前に支払ってしまうのはよいのでしょうか?」

と質問される方がおります。

あまりに直前だと、やはりそれは、特定の債権者に対する偏った返済であり、 「偏頗弁済」と言って、その返済した金額分は、手元にまだ残っているものとみなされます。

どういうことかと言いますと、個人再生の場合には、その最低弁済額を決める際に、手元に有している財産以上の金額を支払うというルールがあります。

(これを清算価値保障といいます。)

せっかく、返済をして借金を減らしたはずなのに、その返済がなかったものとして、その返済に回したお金がまだ手元に財産としてあるはずだからと、その分最低弁済額があがってしまうのです。

最低これぐらいは返済しなければならないという金額が多くなるのです。

ですが、まあ、それが限度という事にはなります。

これが、自己破産の場合ですと、「否認権行使」と言いまして、破産管財人が、せっかく、その人が返済した支払先に連絡して、

「返済した分を返してください。」

「返さないと否認権行使をして、裁判で訴える。」

と言うのです。

恐ろしいことです。

敢えて支払ったという事は、

「どうしてもこの人(会社)にだけは返済しないとまずい。」

「この債務だけは、返済しないと自分が困る。」

と思って返済したのでしょうが、破産管財人から、お金を返せと言われて、お金は取り戻されてしまいます。

管財人から、いろいろ責められて、手間とストレスだけが残ったという事で、 支払ってもらった先も有難くもなんともなく、むしろ、さらに迷惑かけられたという結果になります。

「こんなことなら(どうせ破産するのなら)、払ってくるなよ!」

「なんか、こっちが悪いことしたみたいじゃないか!」

と支払先の人から怒られること間違いなしです。

個人再生における弁済禁止と住宅ローン弁済許可申し立て

そのようなわけで、個人再生においては、一部の特定債権者に対する返済は禁止されるのですが、もし、住宅ローンも弁済禁止ということになるとどうなるでしょうか?

当然ながら、

「住宅ローンの返済をしないのであれば、競売にかけますね。」

と最終的にはそうなります。

「いやいや、私は支払う意欲・気持ちがあるのですが、禁止されているので仕方ないのです!」

と銀行や住宅ローン会社に言ったところで、

「個人再生したあなたのせいでしょ?」

「だったら、競売にかけるのも仕方ないのです!」

と際限のない「仕方ないのです」に陥るだけです。

そこで、個人再生はその住居の確保が、経済的再生につながると考えたため、 住宅ローンだけは債権者平等の例外としました。

民事再生法は、 経済的な再生を図るための法律であり、立法側もそのあたりを考慮したのでしょう。

そこで、裁判所の弁済許可を得れば、個人再生手続き前も、個人再生手続きが始まってからも、ずっと住宅ローンの支払いが継続できるようにして、住宅が競売にかけられることのないように配慮されているのです。

ですので、住宅ローンについては、個人再生をするつもりなら、そのまま払い続けてください。

(というか、払い続けても大丈夫だから払ってください、とご両親に説明してください。)

~いかがでしたでしょうか。以上、弁護士(新潟市・新潟県)から、個人再生における弁済禁止と弁済許可、住宅ローン弁済許可申し立てについて、ご説明致しました。~

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