【ご相談内容】除籍及び改製原戸籍について
私の叔父が亡くなり、その息子(いとこ)が相続放棄をしてしまったため、叔父の相続権が叔父の甥と姪にあたる私及び妹にうつることになりました。
叔父には、叔父が従前住んでいた新潟の湯沢にある不動産があることぐらいしか分からないのですが、息子が放棄するぐらいだから借金があると考えてよいですよね?
そこで、私たちも相続の放棄をしようと考えるようになりましたが、とりあへずは相続放棄の期限の延長をしようかと思っております。
そして、相続放棄の期限の延長手続きも大変そうなので、誰かにお願いしようかと思って、近所の司法書士さんに相談しようかと思ったら、その相続放棄の期限延長のための必要書類の、
「被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本」
は自分でとってください、と言われてしまいました。
「出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本」
をどのように集めればいいのかが分かりません。
【ご回答】新潟市の弁護士(新潟県)より
すべての戸籍の意味(戸籍の移動、転籍)
戸籍謄本1つをとって、そこに出生から死亡までの身分変動事項(結婚、離婚、養子縁組、離縁)が記載されていれば、非常に便利なのですが、なぜか日本の戸籍はそうなっておりません。
そもそも、戸籍は変わります。
出生時は、親の戸籍に属していますが、結婚すると独立した戸籍を作ることになります。
そして、結婚後、例えば、新潟県南魚沼郡湯沢町から新潟市に引越しをして、
住民票も移動させるけど、戸籍も移動することもできます。
これを転籍といいます。
そうすると、これだけでも、生まれたときの戸籍、結婚後の独立戸籍、転籍後の戸籍、
と3つの戸籍謄本が必要になります。
戸籍の改製(改製原戸籍)
さらに、戸籍の改製、つまり、改製原戸籍(かいせいはらこせき、かいせいげんこせき)の問題があります。
「改製原戸籍」とは、新しい様式に改製(改訂)される前の戸籍のことです。
これも単に、フォントが変わったとか、デザインが変わったとかいうだけならいいのですが、
これが面倒なことに、その改製前後で記載される情報も変わってくるのです。
例えば、具体的には、改製前にすでに、結婚して戸籍から出て行った(除籍された)人の情報は新戸籍には載りません。
また、改正前に離婚したことも、改製後の戸籍に記載されません。
「バツイチの過去なんて載せてくれなくていいよ」
という方もいるかもしれませんが、相続に関する限りでは、
その方の婚姻歴はとても大事なのです。
それにもかかわらず、改製された後の新戸籍だけでは、相続人の範囲・相続関係を判断するのに十分ではないので、「改製原戸籍謄本」をとる必要があるのです。
平成6年改製と昭和32年改製
相続の関係で言えば、重要なのは、平成6年改製と昭和32年改製です。
例えば、昭和46年生まれの人は、平成6年改製を挟んでいますので、
現在の戸籍と、
平成6年改製の前の改製原戸籍
の2つがあります。
また、昭和20年生まれの人は、平成6年改製と昭和32年改製の2つを経てますので、
現在の戸籍の戸籍謄本に加えて、
2つの原戸籍(平成6年改製原戸籍、昭和32年改製原戸籍)が必要です。
戸籍の遡り(すべての戸籍の集め方)
まずは、現在の戸籍を取得します。
被相続人が亡くなった当時の本籍地の役所に戸籍謄本の請求をします。
例えば、結婚により、そこに戸籍を移してきたということですと、その戸籍謄本に、
「どこどこ(○○)から入籍」
と書いてあるはずです。
転籍により、そこに戸籍を移してきたということですと、その戸籍謄本に、
「どこどこ(○○)から転籍」
と書いてあるはずです。
従って、次は、「どこどこ(○○」戸籍を管轄する役所に対して、出生から婚姻して除籍されるまで(あるいは出生から転籍まで)の戸籍を請求することになります。
そういう記載が見当たらないという場合には、
「いついつ(●年●月●日)改製」
と書いていないか見てみてください。
それがあれば、その戸籍は、改製原戸籍があることを意味していますので、同じ本籍地の役所に「改製原戸籍謄本」を請求してください。
戸籍というのは、その戸籍がある市区町村単位で保管されているので、ずっと、その場所から生まれてから亡くなるまで動いたことがないということであれば、一か所ですべて揃うはずです。
普通は相続放棄手続を依頼する先でやってくれる
そちらの司法書士さんの事務所は、あまり登記以外はやらない事務所なのかもしれません。
通常、相続(放棄)手続き一式を依頼する場合には、その延長手続きもやってくれるはずですし、必要な書類の収集も併せて依頼できるはずです。
もちろん、その分、費用はかかりますが、以上のご説明で、戸籍謄本の収集が難しいなと思う場合には、別の事務所を探した方が早いかもしれません。
いずれにせよ、相続放棄の期限延長も、相続放棄自体も期限があるので、早めに動いておきましょう。