【ご相談内容】生前贈与をする場合の贈与税特例について
まだ、両親とも健在ですが、さすがに、70歳をすぎて、体力的には、かなり弱ってきております。
また、父は個人事業をやっているため、借金もそこそこは、あるそうです。
ですが、具体的にいくらあるのかを尋ねても、
「心配するな」
「俺が生きている間になんとかする」
と適当なことしか言おうとしません。
母親からも聞いてもらったことがありますが、
「女が商売に口を出すんじゃない」
と逆に怒られてしまったそうです。
ただし、私は家業を継ぐ予定はないですが、もう実家に私と妻と子供3人が両親と同居しており、生活基盤が出来上がってしまっています。
そこで、知り合いに相談したところ、
「両親が健在の間に、自宅不動産の贈与を受けておこうと思います。
そして、もし、両親(特に、父)が亡くなった時に、借金があった場合には相続放棄をしようと思うのですが。
それでよいでしょうか?
【ご回答】~弁護士〔新潟市(新潟県)〕からのご説明~
相続対策としての生前贈与が税金に注意
生前贈与を受けておいて、亡くなった時にその方に借金がある場合には相続放棄をする、ということですね。
このこと自体は特に問題がありませんが、生前贈与と言っても、タダで資産を移せるとは限りません。
必ず、税金の問題が絡んでくるので、よく税理士さんと相談した方がよろしいですよ。
一応、一般に相続対策などとして言われているやり方について申しておきます。
贈与の基本は暦年贈与
年間110万円までで、10年間は、贈与税が課されませんので、相続人1人あたり、1100万円までは無税で贈与が受けられます。
ただし、ご両親が弱ってきているとのことですので、相続発生前3年以内の贈与は贈与とはならず、相続時の財産として、相続税の対象にはなります。
ですが、これは税法上の税額計算の問題ですので、相続放棄はできます。
また、お孫さんとかがいるような場合でしたら、お孫さんへの贈与をすれば、一旦、祖父→子、子→孫と相続が発生し、相続税が発生することになるよりは良いかもしれません。
かなり先の話ではありますので、孫の代にまで財産が残ればの話です。
相続時精算課税制度
相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の推定相続人である子、又は孫に対して財産を贈与した場合に、2500万円の限度額に達するまで何度も控除が出来る制度です。
相続時精算課税制度を使うと、相続しないといけないのではないかと思われている方がいますが、相続放棄自体はできます。
税法上の問題と民法上の問題は別個です。
そして、相続時精算課税制度により贈与を受けたにもかかわらず、結果として、相続放棄をしたとなると、そのもらった財産は税法上、何なんだということになりますが、そもそも、相続人でなくても相続財産をもらうことはあります。
そうです。
「遺贈」です。
税法上は、「遺贈」により、遺産を受け取ったとして、相続税の課税対象となります。
相続放棄をしているのに相続税がかかることに違和感を感じるかもしれませんが、税法上の税額計算と実態とがずれているだけです。
教育資金の一括贈与
30歳未満の孫などに贈与することができ、1人につき教育資金として1500万円までを課税なしで贈与できる制度が、2019年3月31日まで施行されておりましたが、対象を絞った形で、2021年3月31日まで延長されることになりました。
【参考:文部科学省HP】
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2018/12/20/1412042_04.pdf
主な内容は次の通りです。
”祖父母等から孫等に対して一括贈与された教育資金に係る贈与税の非課税措置について、以下の措置を講じた上で、適用期限を2年延長する(2021年3月31日まで)”
(改正事項)
・教育資金管理契約の終了年齢につき、従来の30歳から、在学中であることを条件に40歳まで引き上げ
・所得制限の新設(孫等の年間所得が1000万円を超える場合には非課税措置を受けられない)
・23歳以上の孫等の教育資金の範囲を、学校等や教育訓練給付の支給対象となる教育訓練に係る費用に限定(習い事等は対象外)
・贈与から3年以内に祖父母等が亡くなった場合、孫等が23歳以上であれば贈与の残額を相続財産に加算(在学中の場合を除く)
住宅取得資金贈与
2015年1月1日から2021年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、所定限度額まで、贈与税が非課税となります。
贈与税の配偶者控除
贈与税の配偶者控除とは、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2000万円まで控除となり課税されません。
以上、何やら、相続税対策みたいな話になりましたが、贈与税がどのような場合にどのくらいかかるのかをよく税理士と相談の上で行わないと、借金は相続放棄で負わなくて済んだけど、税金の支払いでかえって資産が苦しくなった、ということになりかねませんので、ご注意ください。