【ご相談内容】相続放棄を妨げる処分行為について

母方の祖父が亡くなり、相続人は、母とその姉(私の叔母)です。

母方の祖母はとっくに亡くなっております。

ですが、母は20代で結婚して、新潟から埼玉に引っ越してしまい、以来、祖父は母の姉(私の叔母)とその旦那及び子供たち家族とずっと暮らしてきており、しかも、遺産と言っても僅かばかりの預貯金と祖父及び叔母家族が一緒に住んでいた新潟の家だけです。

ですので、母は相続放棄をして、すべてを母の姉(叔母)に相続させようとしています。

それはそれでよいのですが、一件、祖父名義の定期預金があって、それが東京にしかない信用金庫なのです。

母は叔母から頼まれて、代理で代わりにおろしてきてくれないか、と言われています。

母がもらうわけではなく、代理で行くだけですので、相続放棄をする妨げにはならないとは思いますが、大丈夫でしょうか?

母はまだ相続放棄をしておりませんが、3か月以内には必ずする予定です。

【ご回答】~弁護士〔新潟市(新潟県)〕からのご説明~

相続放棄するなら順序が大事

ちょっと待ってください!

順番が逆ではないでしょうか?

相続放棄をしていない段階で、信用金庫の定期預金の解約に行っても、その時点では、お母様はまだ「相続人」です。

いくら信用金庫の人に、

「そのうち私(お母様)は相続放棄するので姉だけが唯一の相続人です。」

「姉の代理人として私が定期預金の解約手続きに来ました。」

と言っても、信用金庫の担当者としては、後でお母様が翻意するかもしれないし、いくら代理人としてその場でお母様が納得しているといっても、手続き上、相続人全員のサインと印鑑が必要となります。

つまり、その時点では、お母様も「相続人として」定期預金解約の手続についてのサインと押印を求められると思います。

そこで、

1 叔母様の代理人としてのお母様のサイン・押印

2 相続人本人としてのお母様のサイン・押印

が必要となってきます。

お母様が訳も分からないまま信用金庫の担当者の言うがままに、サイン・押印をしてしまうと、その時点では、お母様は、相続放棄ができなくなる行為である「相続財産の処分行為」をしてしまったことになります。

後に相続放棄ができなくなります。

まず相続放棄の手続きを行う

そのような事態を避けるためには、まず、相続放棄の手続を先行させる必要があります。

そして、「相続放棄申述受理通知書」、つまり、「相続放棄が受理されましたよ」という書類を持参してから、信用金庫に行きましょう。

信用金庫に行って、上記のうちの2の手続だけ、

2 相続人本人としてのお母様のサイン・押印

をしてきてください。