【ご相談内容】兄弟の遺留分と遺言の有効性について
夫が亡くなりましたが、私たちには子供がいません。
ただ、夫には、弟と妹がいます。
夫は、私のために、遺言を遺してくれました。
その遺言には、夫の財産はすべて私に相続させると書いてあります。
このように、遺言ですべて私に相続させるという内容になっていれば、夫の弟や妹からは相続放棄してもらわなくても、すべて私が相続できますよね?
夫の弟や妹に相続されるものはありませんよね?
遺留分とかも請求されないですよね?
弟の方から、「兄(夫)に借金があったのか?」、「兄(夫)は保険に入っていたのか? 」とおせっかいなのか、探りを入れているのか、しきりに質問が入っていますが、答える義務はありますか?
こんなことを言ってはなんですが、夫の弟は、投資関連の仕事をしていると言っているのですが、実際のところ、何をしているのか分からないところがあり、しかも、その奥さんもお金にうるさい人で警戒しています。
【ご回答】~弁護士〔新潟市(新潟県)〕からのご説明~
兄弟姉妹には遺留分請求権がない
義弟の質問の意図(相続財産に関心あり?)
兄弟姉妹にも相続人としての資格はありますが、相続人が兄弟姉妹である場合には、遺留分請求権がありません。
ご相談にあるように、あなたにすべて遺産を相続させる旨の遺言がある場合には、その義弟や義理は、遺留分を請求することができないため、別に、相続放棄をしてもらわなくても、義弟や義妹が相続財産を取得することはできません。
また、義弟の方から、ご主人に借金があったのか等の質問が入っているということですが、どのような意図なのでしょうかね。
1)義弟も相続できると思い込んでおり、遺産の中に負債が入っていないかを心配している
2)義弟は相続する気がなく、放っておきたいが、借金があると相続放棄しないといけないので、それを心配している
のどちらか、あるいは、
3)義弟は、ご主人を失ったあなたの今後の生活が成り立つのかを心配してくれている
という可能性もあるのかもしれませんが。
だと思います。
被相続人に借金があった場合の相続関係
財産と異なり、借金(負債)があった場合には、たとえ、遺言で、
「借金(負債)は全部○○に相続させる」
と書いたとしても、債権者との間では有効にはなりません。
債権者は法定相続分にしたがって、相続人に請求することができるのです。
ですので、義弟の場合にも、
「相続放棄しておかずに後でたいへんなことになったら困る」
とそのことを心配している可能性もなくはありません。
今回、あなたに、全部相続させる旨の遺言があり、あなたも全部相続する気があるのであれば、義弟からの質問は、何やら、相続財産を狙っているような印象を受けるかもしれませんが、絶対そうとも言い切れません。
まずは、遺言があること、そして、その遺言の内容(あなたが全部相続することを)を知らせてはいかがですか?
その反応で何か分かるかもしれません。
また、借金・負債が本当にあるんであれば、知る範囲で教えてあげてもいいと思います。
ただし、後から、別の借金が出てきて文句を言われても困るので、
「自分が知っている範囲であるので、いずれにせよ、最終判断はご自分でお願いします。」
という限定を付けておくといいでしょう。
さらに言うと、それは口頭ではなくて、メール等の残る形にしておいた方がよいでしょう。
遺留分請求はなくても遺言の有効性を争われる可能性はある
ただ、そのことを伝えても、もし、1)の場合、つまり、
「1)義弟も相続できると思い込んでおり、遺産の中に負債が入っていないかを心配している」
だとすれば、なんとか遺産を取得する方向で動いてくるでしょう。
ですので、
「ああ、そんな遺産があるんだ。」
「念のため、相続放棄しておくよ。」
などとは言わないでしょう。
むしろ、それでは収まらずに、
「そもそも、その遺言は有効ですか?」
「本人がその時に認知能力が落ちていたということはありませんか?」
などとさらに食い下がるおそれもあるでしょう。
それでも、答える義務はないとしても、答えない限りはずっと、うるさく言ってくるでしょう。
そして、本気で遺言を争ってくるのであれば、そのうちに、弁護士を立ててくるかもしれません。
そこまでになると大変だ、と思うのであれば、答えられる範囲で答えた方がいいとは思いますが、それが吉となるか凶となるかは、相手次第でなかなか読めないところです。
先回りして、こちらが代理人をたてて、
「遺言があるんだからツベコベ言わないでくれ」
と釘をさすことも場合によってはあり得ます。