【ご相談内容】一部遺産の相続放棄と会社の株の相続

長男、次男、長女(私)、三男が亡くなった父の相続人です。

父は、会社を経営しておりましたが、その会社に入って父を助けていたのは次男です。

長男は、父の勧めを断り、別の会社に入って、その会社も長続きせず、自分で商売をやってはうまくいかず、その商売の失敗で作ってしまった借金の整理で、父からの援助も受けてきました。

それなのに、父が亡くなったとたんに、長男ずらして、父の会社の株を男三人で均等に持ち、自分も会社に入ると言い出しました。

私は、女と言うこともあり、預金、投資信託等をもらうことで話はついていますが、次男は、

「兄貴(長男)が会社に入ってきたら、会社が潰れる!」

と焦っています。

三男は、会社のことに関して、積極的な意見は言いませんが、少なくとも、長男の味方ではありません。

ですので、次男、私(長女)、三男 VS 長男、という図式がなんとなくできつつあります。

長男に対しては、私からも何度か、会社の株は、次男に任せてその代わり別の財産(遺産)を取得したらいいのでは?

と話しておりますが、頑として、長男は、会社の株をもって、会社に入ることを譲りません。

なんとか、会社の株だけを相続放棄させる方法はないのでしょうか?

ちなみに、会社の株は、父が80%と、取引先の会社2社が10%ずつを持っており、その取引先の会社の社長は、次男の味方です。

と言いますか、

もし、長男が会社に入ってきたら、取引はやめることになるかもしれない、

と言っております。

それから、次男は、会社の銀行借り入れについては、すべて連帯保証をしています。

【ご回答】~弁護士〔新潟市(新潟県)〕からのご説明~

遺産の一部放棄はできない

たしかに、長男が会社に入ってきたら、大変になるかもしれませんが、

「会社の株の相続だけを相続放棄させる」

ということはできません。

そもそも、

「一部の遺産・相続財産を相続放棄する」

ということはできませんし、

「他人がその人に相続放棄を強いる」

こともできません。

基本は遺産分割調停による株の集中

ですので、やり方としては、一つは、調停→審判にまで持っていって、遺産の分け方としては、次男に会社の株を集中させるという主張をすることです。

いわゆる遺産分割調停(遺産分割審判)です。

遺産分割調停とは、遺産分割をする際に相続人間での遺産分割の方法について協議がまとまらないときに、家庭裁判所で利用される手続きで、「裁判所が間に入った遺産分割の話し合い」のことを言います。

遺産分割協議がまとまらない場合には、「遺産分割調停」または「遺産分割審判」を申し立てる必要があります。

例えば、離婚事件の場合ですと、離婚調停をすっ飛ばして、いきなり訴訟を提起して、裁判官の判断を仰ぐということはできず、必ず、調停を前に行われなければなりません。

これを調停前置主義と言います。

他方、遺産分割事件については、離婚事件のように調停前置主義は定められておらず、いきなり、審判を申し立てて裁判所の判断を仰ぐという事も理屈上は可能です。

ですが、いきなり審判を申し立てても、裁判官が、

「まずは調停で話し合ってみてください」

という場合がほとんどです。

遺産分割調停が申し立てられると、裁判所から調停を行う日(期日)の指定がなされます。

期日には裁判所に出頭し、調停委員に自分の主張を説明します。

調停委員は、これまた離婚調停の場合には、いわゆる法的な意味での素人の方が調停委員になる場合が多いですが、遺産分割調停の場合には、専門的な要素が入るために、弁護士の調停委員が配点されることも多いです。

次男が会社の株を所有することの必要性、

ないしは、

長男が会社の株を持った場合の弊害

を主張していけば、なんとか認められるのではないかと思われます。

ですが、もちろん、これまでの経緯も踏まえて、弁護士に相談して、綿密に打ち合わせが必要です。

それか若しくは、普通にあなたも含めて相続されてはいかがですか?

つまり、あなたにも遺産の法定相続分があります。

普通に相続すれば、会社の株の80%の4分の1である20%が手に入ります。

会社の安定運営のために何株必要か?

そうすると、

長男    20%

次男    20%

あなた   20%

三男    20%

取引先2社 20%
 
となり、

長男以外が協力すれば、80%になります。

80%の株を有すれば、安定した会社運営が可能です。

株主総会の普通決議をするには、51%

が必要で、

株主総会の特別決議をするには、67%

が必要ですが、いずれも可能です。

会社に入るといっても、取締役の選任には、株主総会の普通決議が必要です。

ですが、長男だけでは20%しかありませんから、会社の株を持っていたところで、自分を取締役として選任することができません。

なので、取り急ぎはその形で落ちつけておいてはいかがでしょうか?

とはいえ、20%も株を持っていると、いろいろと要求してくる可能性もありますので、

事後的に、なんとか、長男から買い取る方策を考えていくしかないのではないでしょうか。

必ず、そのタイミングないしチャンスは訪れますので、悲観しないで、1つずつできる手立てを講じていくことです。