【ご相談内容】連帯保証人と保証人の違いと日本学生支援機構の対応

前回の続きです。

勤めていた会社が民事再生法の適用を受けることになりました。

新卒で勤めた会社で営業職をしていましたが、その会社が私が入社してから一年しかたっていないのに民事再生法の適用を受けて倒産してしまいました。

その後、職を転々とするうちに、段々、借金が増えてしまいました。

そして、奨学金も滞納してしまいました。

日本学生支援機構から督促の書類や電話があり、事情を説明しましたが、全く聞く耳を持ってくれません。

「とにかく、すみやかに延滞が解消されなければ、連帯保証人に請求がいきますので。」

とガチャッと切られてしまいました。

連帯保証人は母親ですが、年金暮らしで、とても奨学金の肩代わりできる余裕などありません。

また、保証人として、私の姉が保証人になっています。

二人いっぺんに請求がいくのでしょうか?

それとも、順番があるのでしょうか?

そもそも、連帯保証人と保証人は何か違うのでしょうか?

 
【ご回答】~弁護士(新潟市・新潟県)から~

日本学生支援機構のホームページ上の保証人の説明

日本学生支援機構が掲載している”連帯保証人”についての説明は、次の通りです。

奨学生本人と連帯して返還の責任を負う人です。原則として「父母」です。”

つぎに、同じく、日本学生支援機構が掲載している”保証人”についての説明は、次の通りです。

あなた(奨学生本人)と連帯保証人が返還できなくなったときに、あなた(奨学生本人)に代わって返還する人です。原則として「おじ・おば・兄弟姉妹等」です。”

特に、連帯保証人と保証人の法的性質の違いについては述べられておりません。

連帯保証人と保証人の違い(催告・検索の抗弁権、分別の利益)

連帯保証人と保証人の違いは、保証人には、次の「抗弁権」というものが認められている点です。

催告の抗弁権

債権者が債務者本人ではなく、保証人に債務の返済を請求してきたときに、債務者本人にまずは請求してくださいと言える権利です。

検索の抗弁権

債権者が債務者本人にまずは請求した後に、保証人に請求してきたとしても、債務者本人に返還する資力があり、かつ、債務者本人からの回収が容易であることを証明して、債務者本人から回収してくださいと言える権利です。

分別の利益の主張

債権者が保証人に債務全額の返済を請求してきた場合に、他に保証人がいる場合には、保証人の数で割った金額分だけしか支払わないと言える権利です。

例えば、200万円の請求がなされて、他に(連帯)保証人が1人いる場合には、その(連帯)保証人と2人で頭割りして、半分の100万円しか支払わないと言える権利です。

日本学生支援機構の間違った?保証人からの回収

抗弁は債務者が自分で主張する

連帯保証人と保証人の3つの違いは、以上のように、たしかにあるのですが、保証人からの抗弁として、保証人が自主的に主張しなければならないのです。

債権者の方が債務者のことを考慮して、

「あなたには、催告の抗弁権検索の抗弁権分別の利益の主張ができる権利があるので、それを主張した方があなたのためにはなりますよ。」

と言ってあげる義務はありません。

ですが、公的な機関である日本学生支援機構が、そういう債務者に対する配慮をしないで債権回収をする態度に批判もあります。

分別の利益についての誤った案内

さらには、誤った案内をしていることもあり、日本学生支援機構のホームページ上にも”「分別の利益」に係る誤った案内と返金について”と説明されています。

”元奨学生が保証方法の選択について人的保証を選択していた場合であって、保証人が、返還者本人又は連帯保証人に代わり、奨学金を返還する場合、本機構に対し、申し出ることによって、保証人が返還すべき金額を、請求額の2分の1にすることができます。この申し出は、法律(民法)で定められている「分別の利益」という保証人の権利(抗弁権)です。”

→あくまでも、「本機構に対し、申し出ることによって、保証人が返還すべき金額を、請求額の2分の1にすることができます。」と申し出る(主張する)ことを前提としており、保証人の方の法律的な知識不足がないように、機構側から債権回収の際に説明するということではないようです。

”この度、本機構において保証人の方からの「分別の利益」の申し出に対して、保証人の方に誤った案内をしていたことが判明しました。”

”当該期間においては、保証人の方からの「分別の利益」の申し出に対し、「本機構が保証人の方に請求した時点において、既に保証人の方が返還されていた場合は、返還残額の2分の1から既に保証人の方が返還された金額を差し引いた金額を保証人の方への請求額」として案内すべきところ、「既に保証人の方が返還された金額を差し引かず、本機構より請求した時点における残額の2分の1の金額を保証人の方への請求額」として案内しておりました。”

→例えば、奨学金債務が300万円あって、保証人が債務者に成り代わって100万円を支払い、残額を200万にしたとすれば、すでに保証人は100万円については、支払う義務を果たしております。

ですが、それで、残債務の200万円のち、さらに100万円を支払うと、合計で300万円のうち、

200万円支払ったことになり、本来は150万円だけしか支払わなくてもよかったのに、50万円多く支払ったことになります。

”誤った案内をしてしまった保証人の方は60名いらっしゃいますが、この方々に対しては、本機構からご連絡させていただき、本来ご返還いただく必要がなかった金額分につきましては、速やかに返金させていただきます。返金する対象者は11名で、返金額は全体で約140万円です。”

→この対応は、債権者がもともと保証人の方に、「あなたには分別の利益があるのにそれを教えずに回収してしまったからお金を返金します」と言っているのではありません。

わざわざ、保証人が自ら分別の利益を主張してきたのに、誤った金額を教えたから、その分については返金します、と言っているだけです。

”誤った案内をしてしまった保証人の方々におかれましては、ご迷惑をおかけし、大変申し訳ございませんでした。今後このような誤りが発生することのないよう適正に奨学金業務を行ってまいります。”

→「今後このような誤りが発生することのないよう適正に」と言っているだけで、積極的に保証人に分別の利益を案内するということではないようです。

そもそも、それなら、最初から、保証人の方へ請求をかけるときに一律に案内を出してもよいように思います。

✔ 任意整理に応じない

✔ 将来利息も延滞金も免除しない

✔ 保証人の抗弁も相手(保証人)が気づいていないなら教えない

こういうことやっていることが回収率を上げる方法だと思い込んでいるようですが、あまり厳格な対応は結局、債務者や(連帯)保証人を自己破産に追い込むだけであると思われます。

人的保証ではなく機関保証を選択

これから奨学金を借りようとする方は、少なくとも、保証人の問題については、親族の連鎖破産を防ぐために、機関保証を選択して、万が一に備えてください。

実際、奨学金については、現在政府(文科省等)は、人的保証を廃止して、すべて機関保証に切り替えることを検討しています。

保証料がかかりますが、連帯保証人や保証人まで共倒れにしてはいけません。

~以上、弁護士(新潟市・新潟県)から、日本学生支援機構からの奨学金借り入れに連帯保証人・保証人が要る場合の日本学生支援機構の対応について、連帯保証人と保証人の違いも含めて、ご説明いたしました。~

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