
盗人には相続させない。
兄の妻は、兄が痴呆になった後、兄を虐待して、
妹である私が兄を引き渡すように頼んでも耳を貸さず、 兄は先日亡くなりました。
相続人は妻と私のみで、
その妻が 「財産のすべてを妻に相続させる」という遺言を見せてきましたが、
筆跡は兄のものではないようです。
こう対処せよ
遺産分割の手続きにおいて、
妻については相続の欠格事由があることを主張し、
相続権を剥奪する。
解説 ~遺言書を偽造した者にペナルティはないのか?~
相続欠格とは、
本来は相続人となるべき者が民法において定められている、ある行為を行うことで、
相続権を失うことを言います。
相続欠格となる者は次に述べるような行為をした者です。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、
又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者
三 詐欺・強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺・強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
事例では、相続人が私(妹)と妻のみのため、
本来の相続分は、妻が4分の3、私(妹)が4分の1ですが、
妻が遺言書を偽造したのであれば相続欠格事由となり、
妻の相続権は失われることになります。
ただし、筆跡が兄のものではない点は、
実際には筆跡鑑定をしても確実に証明ができないことも多く、
遺言書の偽造を立証できないかも知れません。
この事例では、虐待されていたということのため、
兄が自由意思で財産を妻にわざわざ全部渡す遺言を残すというのは不自然です。
さらに脅迫されて書かされたと考えられるため、
仮に偽造でないとしても、脅迫されて書かされた点も主張していきましょう。
相続欠格と廃除の違い
「相続欠格」や「廃除」も
共に相続権を奪われるという効果を有する点では同じです。
相続欠格は受遺能力(遺贈を受ける能力)まで奪われますが、
廃除の受遺能力は失われません。
廃除した本人(被相続人)に相続はさせないけど、
遺贈するというのもあまり考えにくい状況ではありますが・・・・・・。