【ご相談内容】相続放棄と相続分の放棄について
相続放棄と相続分の放棄は違うって、大学の先輩に言われました。
ただ、どう違うのかの彼の説明を聞いても全く分かりませんでした。
先輩は法学部の4年生ですが、詳しく聞くと、
「ゼミは、会社法だから」
と誤魔化すのです。
話をそもそも戻しますと、私の母の妹、つまりは私の叔母に当たる方なんですが、その方が新潟の阿賀町というところで亡くなりました。
ただし、小さい時に、一度あったことがあるらしいということで、私は、全く覚えていません。
どういう仕組みか分からないのですが、私が相続人になったそうなんです。
それで、とにもかくにも面倒なことになるは嫌なので、遺産放棄というか、関わらないようにしたいのです。
それが相続放棄だと思って、先輩に話したら、
「それは、相続放棄のことを意味しているの?それとも相続分の放棄?両者は違うんだよ。」
とか言われて、その時点で面倒なことになっており、正直うざいです。
どうするのが一番楽ですか?
【ご回答】弁護士〔新潟市(新潟県)〕からのご説明
相続分の放棄
「相続分の放棄」とは、遺産のうちのプラスの財産を放棄することを言います。遺産に負債(債務)が含まれている場合、それを放棄することはできません。
「相続分を放棄」しても、遡って、相続人にならなかったことにはなりませんので、財産だけを放棄して、債務を相続しなければならない場合があるのです。
すごく分かりずらいかもしれませんが、あなたが相続分の放棄をすると、他の相続人が相続分に応じて取得することになります。
ですが、他の相続人が、あなたが相続放棄をした場合と同一に計算して取得するように意思表示することもできます。
具体的に考えてみましょう。
遺産が1200万円で、相続人は、被相続人の妻と子供3人だとします。
(1)通常(本来)の法定相続
通常であれば、妻が600万円(2分の1)、子供はそれぞれ200万円(各人6分の1)で相続します。
(2)相続放棄
子供1人が相続放棄した場合には、その1人は最初からいなかったのと同じことになるので、妻が600万円(2分の1)、子供はそれぞれ300万円(各人4分の1)で相続します。
(3)相続分の放棄
子供1人が「相続分の放棄」をした場合には、その1人の分を他の相続人が相続分に応じてもらえるので、
妻は700万円(本来の600万円に加えて、相続分放棄された200万円の2分の1である100万円が増加)
子供2人はそれぞれ250万円(本来の200万円に加えて、相続分放棄された200万円の4分の1である50万円が増加で250万円)
ただし、相続分の放棄の際に、「(2)相続放棄」と同じになるように指定して、相続分の放棄をすることができます。
(4)相続放棄と相続分の放棄のどちらが楽か
どちらが楽か、と言うのもなかなか難しいです。
相続分の放棄は少なくとも他の相続人に対して、書面で行っておく必要があります。
他の相続人が複数人いれば、それぞれの連絡先を調べて、しかも、後日、証拠になるように内容証明で送っておいた方がいいことを考えると、相続放棄と大した手間の違いはないのではないでしょうか。
相続放棄は、裁判所に対してのみすればいいですし、集める書類についても、相続分の放棄をする際に、どうせ確認のために必要となる資料がほとんどです。
そして、相続放棄の場合には、それが受理されれば相続放棄が確実に受けいられたことが第三者に対しても証明できますが、相続分の放棄は、あまりしられていないマイナーな手続きです。
十中八九、
「その相続分の放棄の証明をください」
などと言われて困ると思います。
そして、何より、何か借金等が後から出て来たら、それこそ、面倒なことになりますから、あえて何もそんなマイナー手続きをしなくても、普通に相続放棄を選択することをお勧めします。