【ご相談内容】相続放棄の制度内容について
相続放棄とは何か?を教えてください。
今、相続問題が我が家で発生しております。
父が亡くなりましたが、父は、不動産賃貸業で、東京都内及び埼玉県にアパートをいくつか所有しておりました。
しかし、なぜか、一部は父が作った会社名義で、他の一部は父の個人名義、それと父と叔父(父の弟)との共有になっているものがあります。
いずれにせよ、複雑な上に、まだまだローンの支払いも残っているようなので、母からは、
「私(母)とお兄ちゃん(長男)とでやるから、あんたたちは、お兄ちゃんが作った相続放棄の書類にサインしなさい」
と言われています。
私(長女)や妹は、もう、結婚してそれぞれ家庭を持っておりますし、他方で、兄(長男)は未婚で母と一緒に暮らしております。
お金の問題で困っているわけではありませんので、母の言うとおりにしてよいと考えております。
ですので、兄(長男)が作った書類にはサインしてあげようと考えております。
ただ、相続放棄の書類がどういうものなのか分かりません。
そもそも、相続放棄とは?とよく考えると分からないところもありますので教えてください。
【ご回答】弁護士〔新潟市(新潟県)〕からのご説明
相続放棄とは
相続放棄とは、相続人資格を有する人(法定相続人)が被相続人(亡くなられた方)の権利・義務を承継しないこと、すなわち、被相続人の権利・義務を放棄する旨の裁判所に対する手続を言います。
相続放棄の要件
(1)相続人資格を有する人(法定相続人)がする手続きであること
亡くなった方(被相続人)についての相続資格を有していることが相続放棄の前提です。
例えば、遠い親戚の方が亡くなっても、それについての相続資格がなければ、そもそも相続放棄は問題となりません。
(2)被相続人の権利・義務を放棄する手続であること
放棄するものは、不動産とか会社の株とか物そのものであるように思えますが、それらに対する権利を放棄しているのです。
例えば、被相続人の持っていた株券があり、ゴミ袋にいれて捨てたとしても相続放棄をしたことにはなりません。
(また、「義務」とは、借金を支払う義務とか家を明け渡す義務等の何かをしなければならない法的義務のことを言います。)
(3)裁判所に対する手続きであること
相続放棄は、相続人間で行うものではありません。
例えば、お兄さんが
「私は相続を放棄します」
と書いてある書類を持ってきて、それにあなたがサインしても相続放棄にはなりません。
きちんとした裁判所に対する書類にサインしたうえで、提出し、受理されることによって相続放棄になります。
以上の通りですので、あなたや妹さんが、
「財産はいらないので相続放棄するつもりである」
というのなら、それはそれでよいですが、
「借金も相続したくない」
ということであれば、裁判所に対して所定の相続放棄の手続をする必要があります。
(通常は、財産を相続しないけど、債務は相続しても構わないということはないでしょうから相続放棄の手続きをとっておくべきです)
そうしないと、財産はもらえない上に、借金だけを被るという危険性もありますのでご注意ください。