【ご相談内容】連帯保証・相続放棄・限定承認について
以前、夫は友人の会社の雇われ社長をしていたのですが、体調を崩してその会社を辞めてしまいました。
実は、夫が会社を辞める前に、取引先の買掛の担保のために、夫が代表取締役社長として連帯保証をしてしまっているのです。
体調を崩して会社を辞める際に、その取引先さんに
「連帯保証を抜いてほしい」、
とお願いにいったそうですが、その取引先さんは、
「代わりに経済的に信用がある別の連帯保証人を連れてくれば抜く」
と言ったそうで、逆に言えば、それができない以上は、ずっと、夫が連帯保証人のままです。
今、別に何か問題が起きているということはなく、夫が元いた会社の方が、ずっと、支払い続けてはいます。
心配しているのは夫が亡くなってからのことです。
もし、夫が亡くなった後でも、夫が元居た会社が何か事故を起こしたり、倒産したら、やはり、連帯保証人として、夫の相続人である私が連帯保証しなければいけないんですよね?
ちなみに、夫の後には結局、その友人の方が社長におさまっていますが、その人は、自己破産の経歴があり、取引先さんも連帯保証人としてはふさわしくないので、別の方でないと駄目だと言っているようです。
(そもそも、それがあるから夫を社長にしたのだと思います。)
誰か夫に代わって連帯保証人になってくれる方がいればいいのですが、そんな方を見つけるのは難しいと思います。
【ご回答】~弁護士〔新潟市(新潟県)〕からのご説明~
連帯保証人からぬけられるか(連帯保証契約を解約できるか)
本当は、誰か代わりの方を立てて、ご主人が連帯保証人を抜けられると一番良いのでしょうが、なかなか、そんな連帯保証を引き受けてくれる人を見つけるのは難しそうですね。
例えば、銀行取引のような金融取引の根保証契約であれば、極度額を書面等で定めていなければ、保証契約自体が無効なのではないか等を検討することも考えられます。
(ただ、その点に抜かりがないように書類を作っているのが通常です。)
しかし、取引先の「買掛の担保」とおっしゃっているので、金融取引ではないのでしょう。
ですが、会社を辞めた後もいつまでも連帯保証させられるのはあまりにも不合理であることは間違いないです。
そこで、
「将来に向かって、保証契約を解約する」
旨の解約権行使の意思表示を内容証明で送っておいてください。
もちろん、それでも確実に連帯保証を抜けられたかどうかは将来、問題になってみないと分かりません。
解約権行使できるという判例はあるにはありますが、何せ古い判例なのです。
解約が有効であるか否かは争いになってみないと分からないところもあります。
相続放棄
あなたのご主人に特に資産がないということであれば、何も連帯保証の危険をはらんだ相続をすることはありませんから、相続放棄をしておけばよいでしょう。
限定承認
他方、ご主人に資産(相続財産・遺産)がある場合、支払いの責任が発生するかしないか分からない連帯保証を回避するために、すべての資産を放棄するというのはたしかに躊躇されます。
連帯保証というのは、本来の債務者が支払いをしなければ、二次的に責任を負って支払い義務を負いますが、そうでなければ何も支払う必要がないわけです。
もし主債務者が普通に支払い終えたとしたら、相続放棄したことを後悔するかもしれませんよね。
その場合に、限定承認という制度があります。
それは、
相続財産の範囲でのみ債務を承継する
というものです。
ですが、逆に言えば、相続財産の範囲内では支払い義務があるので、たとえ、限定承認をしても、
債権者からの請求に備えて、その財産を保全しておかないといけない
つまり、財産を使えないのです。
限定承認は手続きが難しいから、どうのこうのという意見もありますが、弁護士等に頼めばそんなのは関係ありません。
たしかに法的な手続きなので、自分でやれば難しいですが、そんなのは民事裁判だろうが民事再生だろうが、みな同じことで難しいです。
弁護士に依頼してやらせるんだったら、そんな手続きの難しさなど気にする必要ありません。
それよりも問題は、せっかく限定承認をして、債権届を促しても届出してこなかった債権についての
失権効
がないことが問題です。
例えば、1000万円の相続をしても、債権者からの請求に備えて、1000万円を保全しておかなければならないんだったら相続する意味があるのかなあ、と思ってしまいます。
(いい運用先でもあればよいのですが。)
生前贈与
そもそも、連帯保証債務とはいえ、潜在的な問題であって、ある意味、杞憂に過ぎない側面もあります。
だったら、今の時点から、目ぼしい財産については、あなたが贈与を受けたらどうでしょうか?
それで、ご主人に万が一のことがあれば相続放棄して、連帯保証の憂いを絶つということではいかがでしょうか?
もちろん、贈与する場合には、贈与税がかかりますので、その税金の計算をした上で慎重に検討しなければならないですが、贈与税を支払ってでも贈与する価値があるかどうか考えてみてください。