【ご相談内容】個人再生と農地、電気・水道代の支払い

十日町市(新潟県)で、兼業農家をやっており、勤務先は地元の化学関係の工場です。

兼業と言っても、相続した農地のうち、私と家内だけで耕作できる範囲は半分にも満たないので、残りは、近所の農家専業の方にお貸しして耕作してもらっています。

地代は多少は頂いておりますが、ほんのわずかです。

それよりも、いろいろ、米・野菜等を頂いておりますので、それで助かっております。

それで、その相続にまつわる話ではあるのですが、相続した当時は、借金と言っても、JAからの借金が200万円ちょっとぐらいしかないと思っておりました。

ですので、家屋敷・田畑その他多少の預貯金・国債を含めて、長男である私が相続したのですが、実は、ほかにも、2000万円ほど借金があることが判明しました。

親父が知り合いの会社の社長さんの連帯保証人になっていたのです。

地元の信用金庫から、突然、手紙が送られてきたので、びっくりして、担当者に確認したところ、その社長さんは、親父が亡くなる前から、返済が滞っていたとのことでした。

「それが分かっていたんだったら、なんで、相続のときに教えてくれなかったんだ!」

と文句を言いましたが、担当者は、

「お父様には伝えていた。」

「親子だから、当然、伝えているものだと思っていた。」

「信金には、家族全員に伝える義務があるとでも言うのですか?」

と開き直りです。

ただし、すでに相続してしまっている以上、相続放棄もできないので、この借金の整理をしないといけないのですが、農地は今のままで個人再生をすることは、できるのでしょうか?

それから、ビニールハウスに結構な電気代と水道代がかかるので、月によっては大きな金額になり、これを、たまに溜めてしまってから、まとめて支払うこともあるのですが、大丈夫でしょうか?

これまで、多少督促されることはあっても、電気や水道を止めると言われたことはありません。

【ご回答】~弁護士(新潟市・新潟県)から~

個人再生と所有農地

個人再生というのは、基本的に、所有している資産・財産を手元に残しておきながら、負債をカットして、一定期間で返済する手続きです。

ですので、むしろ、負債の整理をしたいけれども、手元になる財産を手放したくないという人に適している手続きです。

ただし、所有している財産の額以上の返済をしなければならないという原則がありますので、

 (これを「清算価値保障」といいます。)

所有している財産の額によっては、返済額が多額になる場合があります。

個人再生開始決定による弁済禁止効と偏頗弁済

個人再生の手続が開始されると、原則として、すべての負債・借金の返済が禁止されます。

これを、個人再生開始決定による弁済禁止効といいます。

もし、この弁済禁止効に違反して、

特定の負債・借金についてだけ、

特定の債権者にだけ、

支払い・返済をしてしまうと、それは、債権者平等の原則に違反します。

お分かりですよね?

そのため、このような偏った返済は、「偏頗(へんぱ)弁済」と言われ、債権者平等の原則から禁止されています。

この偏頗弁済となる返済は、何も、個人再生の手続きが開始された時点以降とは限りません。

そうすると、個人再生手続きをとる1日前に返済しておいて、それから個人再生手続きをとる、という人がいるかもしれません。

ですから、抽象的ではありますが、

支払いが不能である不能になった)、

と判断されるときから、その返済が偏頗弁済かどうかが問題となるのです。

偏頗弁済してしまった場合

そして、実際にその支払いが偏頗弁済である、と判断される場合には、その偏頗弁済はなかったものとして扱われます。

「なかったもの?」

「過去には遡れないのにどういうこと?」

と思われるかもしれませんが、要するに、その偏頗弁済として支払われた金額は、本来はしてはいけなかった返済なのであるから、その返済に回った金額は手元にある(残っている)とみなされるのです。

つまり、例えば、偏頗弁済を10万円分したというのであれば、本来はしてはいけなかった弁済なのだから、手元に現金が10万円残っているはずである、

という計算をされるのです。

そして、手元に10万円残っているとすると、あなたの所有財産額もプラス10万円として計算されるのです。

「それだけだったら別にいいじゃないですか。」

「要するに、最低返済額が10万円プラスになるだけでしょ」

と言われるとそれ以上返す言葉はないのですが。

個人再生の手続開始時点で電気代・水道代を滞納している

ただし、電気代や水道代(水道光熱費)については、少なくとも個人再生開始前6ヶ月以内の滞納分については支払っても偏波弁済として問題にされることはありません。

従って、支払っても何ら問題ありません、というよりも支払わなければならないとされているのです。

こういう電気代とか水道代とかの請求権には、優先して回収できるように、 ちょっと難しい言葉で言うと、 先取特権というものがくっついているので、他の一般の債権よりも優先してと扱われます。

これを「一般優先債権」と言います。

電気水道の継続的給付義務

電気・水道の停止について心配があるかもしれませんが、そもそも、このような電気とか水道の供給に関する契約は、供給側に継続的給付義務があります。

つまり、仮に、滞納分があったとしても、個人再生手続きが開始した後の支払い分をきちんと支払っていれば、契約を解除される(電気や水道の供給を停止される)ということはないのです。

ですので、滞納分の心配よりも、個人再生手続きが開始された後の支払いを、きちんと行うことに集中してください。

~いかがでしたでしょうか。以上、弁護士(新潟市・新潟県)から、個人再生を行った場合に、所有している農地はどうなるか?電気代・水道代の滞納がある場合どうなるか?電気代・水道代はどのように支払えば良いのか?につき、ご説明致しました。~

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