【ご相談内容】相続放棄と代襲相続及び成年後見について

母が亡くなりました。

自宅土地建物はありますが、大した価値はありません。

他方で、借金が多くて、相続したくありませんので、相続放棄をしようと思います。

父は、入り婿で、家の名義も母100%です。

父は、まだ存命ですが、痴呆ではないかと思われます。

相続人は、父と私の2人です。

私は結婚しており、夫と子供が3人います。

私が相続放棄をすると、父1人が相続人となりますか?

それとも、私の子供に相続権が移り、子供がまた相続放棄する必要がありますか?

また、父が痴呆でも相続放棄はできますか?

【ご回答】~弁護士〔新潟市(新潟県)〕からのご説明~

相続放棄と代襲相続

相続権があなたから子供へと1世代下に移行することを

「代襲相続」

と言います。

例えば、お母様が亡くなった時点であなたが既に亡くなっていたような場合に、あなたの相続権がお子さんに移行することを言います。

しかし、そうではなくて、あなたが存命で、あなたが相続放棄するという場合には、もともと、あなたは相続人でなかったことになります。

ですので、あなたのお子さんに移行する相続権はありません。

つまり、あなたが相続放棄をした場合には、お子さんが相続放棄をさらに行う必要はありません。

相続放棄後の次順位相続人

それでは、あなたが相続放棄をすると、あなたのお父さんだけが相続人になるのかというと、そうではありません。

配偶者は常に相続人ですが、その他は、子→親→兄弟姉妹へと相続権が順次移行します。

ですので、子がいない本ケースでは、次に、お母さんの親御さんに相続権が移ります。

つまり、あなたの母方の祖父・祖母がいるのであれば、そちらに相続されます。

もし(年齢的にあまり無いケースですが) 、あなたの母方の祖父・祖母はもう亡くなっているけれども、さらに、その親、つまり、あなたの曽祖父、曾祖母がいるのであれば、そちらに相続されます。

そして、そちら(あなたの曽祖父、曾祖母)もいない場合で、あなたのお母様の兄弟姉妹がいるのであれば、そちらに相続されます。

そして、もし、その兄弟姉妹が亡くなっている場合でその兄弟姉妹の子供がいれば、そちらに相続されます。

この場合の相続が「代襲相続」です。

ちなみに、その兄弟姉妹の子供がなくなっている場合に、さらに、代襲相続が起こるかというと、それはありません。

兄弟姉妹の子供までです。

痴呆(認知症)の方の相続放棄

ご質問のケースでは借金の方が多いということですので、相続放棄をした方がいいのかと存じます。

ですが、相続放棄という法律行為をなすためには、自分のしていることが何であるかが分かっていなければなりません。

法律行為をする能力、行為能力が必要です。

ですので、認知症の方の場合には、その方に代わって法律行為をするための代理にが必要です。

それが成年後見人です。

もし、本当に認知症ならそのために成年後見人を選任する必要があります。

ただ、相続放棄をするためだけなのですから、わざわざ弁護士等が成年後見になる必要はないでしょう。

あなたが成年後見人になる旨の成年後見を申し立てることでよろしいのではないでしょうか。

そして、あなたとお父様双方についての相続放棄をするという手続をすれば足ります。

成年後見の申し立てをするのは、少し大変でしょうが、いずれにせよ、子供はあなただけですから、相続放棄が成年後見の申し立てをするタイミングだとお考えになってはいかがでしょうか。

ただし、認知症かどうかはっきりとよく分からないということであれば、弁護士によく相談してみてください。

成年後見制度では、裁判所に報告をあげなければいけないとか、結構、大変な側面もあるのです。

相続放棄だけして、

「はい。これで成年後見は終わりにします。」

というわけにはいかないのです。

その点も含めてよく検討・判断してください。