【ご相談内容】個人再生(破産)と貸与型奨学金の問題
私たち夫婦は、債務の整理のために、そろって個人再生を申し立てることになりました。
なんとか自宅を維持することについては頑張りますが、娘が一生懸命勉強して大学に進学しようというのに、学費を出してあげることができません。
娘の志望校には、新潟大学も入っております。
どうすれば、娘に大学での学業をさせてやることができるでしょうか?
親がこのような債務の返済に窮しているということですと、例えば、奨学金などは受けることができないでしょうか?
【ご回答】~弁護士(新潟市・新潟県)から~
例として新潟大学の奨学金
※情報はすべて新潟大学のホームページからのものです。
まずは、給付型奨学金であれば、親が債務の整理に着手しているとか、個人再生をしているなどの事情は一向に問題がありません。
【給付型】日本学生支援機構の奨学金
新潟大学のホームページを拝見したところ、給付型としては次のようなものがありました。
長谷川財団
応募要件は、学業意欲旺盛,品行方正,健康でありながら.経済的理由等により就学困難な学生
日本教育文化財団
応募要件は、日本国籍を有する1年生で,2019年4月1日時点で25歳以下の学生
清国奨学会
応募要件は、日本国籍を有し,「ものづくり」に関連する理工系または「福祉」に関連する看護・社会福祉系で学ぶ学部1年生・研究科(修士課程)1年生の者
以上のような給付型奨学金が掲載されておりましたが、さらに詳しく調べればもっとあるかもしれません。
【貸与型】日本学生支援機構の奨学金
また、貸与型としてはつぎのようなものがありました。
トヨタ女性技術者育成基金
応募要件は、2019年4月現在,工学部1年生または高等専門学校からの3年次編入生で,将来製造業社でものづくりに関わる女性エンジニアとして活躍していく意欲があり,基金賛同企業が主催する育成プログラムに参加できる女子学生
小堀雄久学生等支援会
応募要件は、家計扶養者の年間収入(税込み)が1000万円以下であり,学部,大学院修士課程の理工系(医学系を除く)に在学している者
新潟大学学業成績優秀者奨学金制度
新潟大学修学支援貸与金制度
新潟大学修学応援特別奨学金
輝け未来!! 新潟大学入学応援奨学金制度
新潟大学大学院博士課程奨学金制度≪博士課程進学者選考対象≫
以上の通りですが、問題は、奨学金の貸与の場合における連帯保証人です。
個人再生と奨学金の連帯保証債務
連帯保証人が個人再生を申し立てる場合
個人再生を申し立てる場合には、あらゆる債務の申告をすることが求められますが、連帯保証債務も例外ではありません。
「えっ?でも、保証債務っていうのは本人が支払えている間は支払う義務はないのでしょ?」
とよく聞かれます。
その通りで、保証人はあくまで保証人なので、本人が支払えなくなったときに初めて支払いを求められます。
債務者本人が何の問題もなく順調に返済を続けているのに、ある日、突然、債権者が保証人に請求することなどありません。
ですが、個人再生の場合には、たとえ、債務者本人が順調に返済を続けている場合であっても、債務として申告する必要があるのです。
例えば、本人が100万円を当初借りたけれども、順調に返済が進んで50万円になった段階で、連帯保証人が個人再生を申し立てたとします。
その債権者は、50万円については、その個人再生を申し立てた連帯保証人に債権の届け出をすることができます。
そして、その結果、どうなるかというと、債権者は、 債務者本人からも連帯保証人からも返済を受けることになるのです。
もちろん、二重取りはできませんので、連帯保証人から支払われた分については、債務者に対しては請求できなくなります。
ただ、問題はそこではありません。
期限の利益喪失事由
通常の場合には、『連帯保証人が破産や個人再生を申し立てる』ことが【期限の利益喪失事由】になっていることが多いのです。
【期限の利益の喪失事由】とは、つまり、分割払いを認めないで一括払いの請求をすることができるということです。
そうすると、これまでコツコツと返済してきた債務者は困ってしまいます。
そして、別の連帯保証人を立てれば、分割払いは認めてやると言ってきますが(代担保提供義務)、そんな簡単に、親子でもないのに連帯保証人を引きけてくれる人を見つけることはできません。
教育ローン・学資ローン
これは通常の民間の金融機関が行っているものですが、教育ローンや学資ローンと言えども、やはり、その保護者である親の経済的信用をあてにして貸付されるものです。
ですので、その保護者である親が個人再生をするとか言っている状況では貸してもらえるはずもありません。
~言うほど簡単なことではないですが、給付型の奨学金を得られる様にするか、貸与型の奨学金を受けるために両親以外の連帯保証人を探すか、アルバイトをするか等々ぐらいしか、今の状況でお子さんの学資についての方策としては見当たりません。以上、個人再生(破産)と貸与型奨学金と連帯保証の関係も含めて、ご説明いたしました。~