【ご相談内容】個人再生の申立てが遅れた場合のリスク
前々回、前回に引き続き、新潟で教職関係の仕事をしておる者です。
いろいろあって、ギャンブル・浪費等で借金を多額にこしらえて滞納を続けて、裁判も起されてしまいました。
個人再生をなるべく早く申し立てるべく準備中です。
ところが、裁判の書類、つまり、カード会社が起こした訴訟の訴状を読んでみたのですが、なんか、金利が違う気がします。
これは裁判所に出向いて争った方がよいでしょうか?
それから、個人再生を早期に申し立てる方がいいのは分かっておりますが、申立てが遅れた場合のリスクとしては、給与の差し押さえだけと考えていいでしょうか。
【ご回答】~弁護士(新潟市・新潟県)から~
利息制限法上の制限利息と遅延損害金
利息制限法
あなたの言っている利息の利率というのは、おそらくと、遅延損害金のことを言っているのではないでしょうか?
ちなみに、利息の上限というのは、貸付元本に応じて次のように制限されています。
貸付金元本が10万円未満 ・・・・年20%
貸付金元本が100万円未満 ・・・・年18%
貸付金元本が100万円以上 ・・・・年15%
以上が利息制限法で規制されている上限利率になりますので、これを超える利率の定めは無効となります。
名目を変えて、
事務手数料
とか、
調査手数料
などとしても、これらも
「みなし利息」
として、利息に算入されますので、絶対に上記の上限を超える利息は駄目なのです。
ところがですね。
遅延損害金
唯一の例外というのが、遅延損害金です。
遅延損害金、つまり、約束の期限までに支払わなかった場合のペナルティとして課される金員については、上記の利息制限法で制限された上限利率を超えてもよいとされているのです。
もちろん、無制限にペナルティを定めることはできません。
例えば、
「1日でも遅れたら1億円支払う」
という遅延損害金が有効かというと、そういうわけにはいきません。
では具体的にどうなっているかというと、遅延損害金の上限は、
上限利息の1.46倍まで
とされているのです。
従いまして、
貸付金元本が10万円未満 ・・・・年29.2%
貸付金元本が100万円未満 ・・・・年26.28%
貸付金元本が100万円以上 ・・・・年21.9%
とされているのです。
利息制限法の改正と遅延損害金の上限
ですが、平成22年(2010年)には、利息制限法が改正されており、
営業的金銭消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定(遅延損害金)の上限は、年20%とされております。
「営業的金銭消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定は、その賠償額の元本に対する割合が年二割を超えるときは、その超過部分について、無効とする。」
というのがその規定です。
ですので、カード会社からの請求については、結局、上限20%までは遅延損害金をとることが認められていますので、あなたはそれを見て利息が高いと感じたのではないでしょうか?
もちろん、カード会社からの請求と言えども、その計算に絶対に間違いがないという保証はないので、落ち着いて、再計算してみるに越したことはありません。
遅延損害金と再生債権と個人再生における返済額
個人再生においては、遅延損害金も再生債権に含まれます。
個人再生における最低返済額は、負債(債務)総額に応じて決まってきます。
負債総額 100万円未満 ・・・・負債総額全額
負債総額 100万円以上 500万円以下 ・・・・100万円
負債総額 500万円超 1,500万円以下・・・・負債総額の5分の1
負債総額 1,500万円超 3,000万円以下 ・・・・300万円
負債総額 3,000万円超 5,000万円未満 ・・・・負債総額の10分の1
以上のとおりで、例えば、
負債が400万円の場合には、最低返済額は100万円
になり、
負債総額が1000万円の場合には、最低返済額は200万円
になり、
負債総額が2000万円の場合には、最低返済額は300万円
になります。
この負債総額の中には、個人再生の手続き開始決定までの遅延損害金も入ってきてしまいます。
本来は、負債が400万円で最低返済額が100万円だったのに、
放置しておいたがために遅延損害金が膨れ上がって、遅延損害金が600万円加わってしまったとすると、
負債総額は1000万円となり、最低返済額は200万円と返済額が倍になってしまいます。
ですので、最低返済額を増やさないためにも、なるべく早期に申し立てをした方がよいのです。
~いかがでしたでしょうか。以上、弁護士(新潟市・新潟県)から、借金を滞納し続けて裁判を起こされた場合に、その後どうしていけばよいのか?について、利息・遅延損害金、個人再生の手続きの返済額との関係も含めて、ご説明いたしました。~