【ご相談内容】銀行団との交渉・事業計画案と個人再生

新潟市内で、個人商売で、アジア諸国からの雑貨・家具の輸入販売をしています。株式会社などの法人ではありません。

現在、銀行と信用金庫(日本政策金融公庫を含む。)で全部で4行からの借り入れがありますが、リスケの話し合いの途中で、税理士に協力してもらって、再生計画案を作成中です。

ですが、なかなか税理士とのコミュニケーションがうまくいかずに、再生計画案の完成に至りません。

理由としては、税理士さんは、銀行が最低いくら払ってほしいという意見は考慮せずに、今の私の商売から考えた事業計画を立てているのですが、それでは、正直言って、銀行への返済に回す分は、ほとんど出てきません。

ですが、税理士さんからは、

「これがあなたの事業の正直な姿であり、この範囲内で銀行に納得してもらうしかない」

としか言われないのです。

そこで、税理士さんに、

「とても、この再生計画案で銀行に了承してもらえる自信がない。」

「税理士さんも一緒に交渉に来てほしい。」

と言っても、

「私は、事業計画書を作成するのが仕事であって弁護士でもないのに交渉は出来ない」

「交渉するのが社長の仕事でしょ?」

と言われて、正直なところ、困っています。

最初は、

「社長の事業再生を完全フルサポートします。」

と言われたので、安くない費用をお支払いしたのに、こんな書面を渡されても再生できる気がしません。

弁護士さんに個人再生を頼んで、再生計画案の作成と銀行との交渉を頼んだ方がいいでしょうか?

その場合には、費用はどの程度かかるのでしょうか?

 
【ご回答】~弁護士(新潟市・新潟県)から~

再生計画案と(税理士作成による私的整理のための)事業計画案

そもそも、あなたと税理士さんが行っているのは、個人再生ではなく、いわゆる私的整理ないしはリスケというやつです。

私的整理とは、裁判外において(「公的」ではないので「私的」)、債務者と債権者(主に金融機関)とが、協議によって、債務の額、返済方法等を定めるものです。

裁判所という「公的」な機関を介在させない債務の「整理」手続きであるので、「私的」「整理」というわけです。

私的整理においては、すべての債権者の同意が得られなければなりません。

ですので、極端な話としては、10行の金融機関のうち1行でも反対すれば、私的整理というのは進められません。

ただし、自行の利益のみを主張して、全体としての再生スキームをぶち壊す、ということは、最終的には自行の不利益にもつながりますから、(通常は)経済合理性が働くことになります。

もちろん、全体としての処理をしようとしているのに、「とにかく、うち(自行)の返済をなんとかしろ)」と、言い続ける金融機関もあります。

実際、とある地方で、地元の信用金庫がかかる態度を取り続けたために、最終的に破産に至ったケースもあります。

他方で、メインバンクのエリート担当者が他の金融機関を説得して、銀行団をまとめあげたケースもあります。

要するに、私的整理がうまくいくかどうかは、ケースバイケースで、金融機関とか担当者のめぐりあわせの問題もあります。

その税理士さんは、まじめな方で、今のあなたの事業現状から無理のない事業計画を導いているのだと思います。

ただ、その事業計画案が、金融機関に受け入れられない(受け入れられそうにない)ということなのでしょう。

個人再生における再生計画案

個人再生手続きというのは、「公的」整理です。

私的整理との一番の違いは、個人再生手続きにおける再生計画がその要件を満たしており、債権者の多数決で決議され、裁判所が認可する以上は、反対する債権者がいたとしても、その反対債権者も拘束するということです。

強制力(拘束力)をもって、その再生計画にしたがった債務整理がなされるという点では公的整理の方が都合がいいのですが、他方で、手続きが画一的に定められてしまっているので、柔軟性がありません。

そして、裁判所に提出する個人再生における再生計画案は、何の売上がどうで、販管費がどうで、税金がどうで、減価償却がどうで、といった事業計画案ではありません。

負債総額ないしは自己が有している資産から導き出された最低返済額を、3年ないし5年でどのように(毎月とか3か月に1回とか)各債権者に支払うか、ということを記した書面を言います。

各債権者には、最低返済額しか支払いませんので、要するに、債権カット(債務免除・債務圧縮)が伴います。

債権をカットされる債権者にとっては迷惑な話でしょうが、それが裁判所に認可されれば、強制的に、債権カット(債務免除)の効果が発生します。
 
ですので、言い方を変えれば、個人再生における再生計画案とは、

どの程度(何割)、債権をカット(債務を免除 )してもらうか

及び、それに従って、

3年ないし5年の間にどのように支払っていくか(毎月か、3か月に1回か)

 を定めた書面です。

細かなことを言いますと、例えば、

少額な債権については一括で支払ってしまう

とか、住宅資金特別条項を利用する場合には、

どのように、住宅ローンを支払っていくか

とか、共益債権(※)がある場合には、

共益債権は随時支払っていく

とかを定めたりします。

ちなみに、共益債権とは、個人再生の再生手続きとは無関係に支払っていく債権のことを言います。

例えば、水道光熱費とか、税金とか、養育費とか、生活に必要な債権のことを指します。

個人再生と私的整理の関係

もし、私的整理が破談になりそうなのであれば、個人再生も検討された方がいいかもしれません。

また、個人再生を真剣に検討し始めると、意外と、銀行(金融機関)が譲歩してくる場合があります。

銀行も大幅な債権カットを伴う、個人再生をとられるのは、当然ながら不利益だからです。

~いかがでしたでしょうか。以上、弁護士(新潟市・新潟県)から、再生計画案と(税理士作成による私的整理のための)事業計画案の違い、個人再生における再生計画案、個人再生と私的整理の関係につき、ご説明したしました。~

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